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労務コンサルタントの
事件簿58「緊急受注対応のための限度を超える残業は台湾で認められるのか?」


コラム 人事労務 作成日:2022年8月5日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿58「緊急受注対応のための限度を超える残業は台湾で認められるのか?」

記事番号:T00109283

 人材不足がますます深刻化している中、従業員の残業時間が長くなってきている企業も多いであろう。労動部が公表する労働法令違反企業の最新統計においても、残業に関わる違反は最も多かった。(1位:残業代違反;2位:残業上限違反)特に、製造業では「超過残業」、サービス業では「サービス残業」が最も多く見られるとも言われている。今回は、残業時間に関わる法律の落とし穴について見ていこう。

工場長:客先から追加発注の依頼がありましたが、受けてもよろしいでしょうか?今週末の休日出勤の人数を増やせば、何とか対応できそうです。既に従業員からの同意も得ていますので問題ありません。
総経理:分かった。でも最近休日出勤が多いから、法律の限度を超えないよう管理をよろしく頼むよ。
工場長:承知しました。人事部に確認した所、労働基準法第36条により、天災、事変または突発的事由による残業はカウントされないそうです。今回は予期できない受注の増大であるため、これに該当すると思われます。
総経理:確かこの場合は当局に届け入れが必要だよな?
工場長:はい、その通りです。事後24時間以内に当局に届け入れが必要です。こちらも人事部の方で対応していただけるとのことです。
総経理:了解。休日出勤の件は承認するが、後々トラブルにならないよう届出はきちんとやっておくんだよ。
工場長:承知しました。

(それから数週間後…)
工場長:総経理、大変です。労働局から連絡があり、先日の残業届出の件は却下されました。緊急の受注は突発的事由として認めていないとのことです。これにより、何人かは今月の残業時間が法定の基準を上回ってしまう状況です。
総経理:なんだと!これが認められないというのは不条理に感じるな。本当にそうなのだろうか…。

◉解説
 労働基準法第36条でいう突発的事由について、労働部による法解釈では次のような見解を示している。
突発的事由とは、事前予知の可否、循環性の有無、緊急対応の要否を考慮して判断されるものとする。
(行政院労工委員会台(82)労動2字第67798号函)
 つまり、納期変更、納期逼迫、クライアントの都合による臨時の業務、緊急の受注、受注急増、設備の故障、機械トラブルの対応などの事態は、経営者があらかじめ想定できる範疇であり、元からそれに備えた人員配置やシフト編成を行わなければならないと解釈している。また、司法上においても、同解釈令を参照し、厳しく解釈する判断傾向が見られる。
(台北高等行政裁判所108年度訴字第135号判示参照)
 ではどのような場面であればこれが適用されるのだろうか。例えば、火災や突然の停電などの事態がこれに該当する。また、COVID-19警戒レベル3の時には、民生用品を取り扱う製造業、物流業、流通業等の業者が、テレワークや分散勤務の実施、または従業員の防疫介護休暇の取得等により人員調達が困難になり、民生用品の供給が需要に追いつかない事態が発生した場合において、特別に同条規定を適用することができる。
 今回のケースのように法律の解釈が社会の一般常識と乖離していることも多い。誤解によって法律違反を招くことのないよう注意が必要だ。

 

 

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