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労務コンサルタントの
事件簿54「労工保険に潜むリスク」


コラム 人事労務 作成日:2022年4月8日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿54「労工保険に潜むリスク」

記事番号:T00109287

 近年台湾では労工保険にまつわる労働争議が増えており、2021年では争議件数が600件にも及んでいます。最近の一例として、駐車場を経営している会社で起こった事件を見てみましょう。
副理:総経理、大変です。昨日、板橋の駐車場で従業員が清掃中に倒れて病院に運ばれました。病院に到着する前に既に心肺停止の状態で、命の危険もあると聞いています。

総経理:そんな...一体何があったんだ?
副理:元々持病があったようです。会社としては病気が悪化するようなことはさせていませんので、仕事中に倒れたとしても労災にはあたらないとのことです。
総経理:そうか。では傷病休暇としての
扱いで良いんだな?
副理:はい。しかし、一点問題が発生しています。その従業員は、昨日入社したばかりで入社手続きも終えていなかった為、労工保険の加入手続きも行っていませんでした。
総経理:何だと!それでどうなるんだ?
副理:監督不行き届きで申し訳ございません。本来であれば、労工保険に加入している間に病気や怪我で入院し、就労不能になった場合、4日目から傷病給付が支給されるのですが、それが労工保険未加入により受領できなくなります。既にご家族から損害賠償を請求すると訴えられました。また、万が一亡くなってしまった場合、死亡給付や葬儀手当も補償することになり、多大の損失が想定されます。
総経理:全部でどれぐらいになるのか?
副理:死亡給付や葬儀手当だけでも給与15ヶ月分になります。
総経理:入社当日に遡って加入できないのか?団体保険で何とかできないのか?

◉解説
 労工保険は遡って加入することができません。従って必ず入社日に手続きを行う必要があります。労工保険は日本でいう厚生年金保険に相当する保険です。そのため、労工保険に加入させていなかった場合、将来受け取る年金が減ります。今回のケースにおいては、幸い従業員は回復して職場に復帰できたため、会社は従業員が受給できなかった傷病給付と将来受給できたであろう年金相当額の賠償のみで済みましたが、一歩間違えれば、会社側がとんでもないリスクを負ってしまうこともあるのです。
 尚、今年5月1日から《労工職業災害保険及び保護法》(職保法)が施行されます。従来、職業災害保険(労災保険)は労工保険に含まれていましたが、労災保険の充実を図るため、労工保険条例から独立し、職保法が特別法として制定されました。職保法の立法により、労災保険に関して色々な項目の改正がありますが、その中で労災保険の遡及加入が認められるようになりました。(職保法第13条)ただ、労工保険の部分は、変わらず遡及加入ができない為、リスクに要注意です。

 

 

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