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労務コンサルタントの
事件簿50「台湾の公用休暇を正しく理解していますか?」


コラム 人事労務 作成日:2021年12月10日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿50「台湾の公用休暇を正しく理解していますか?」

記事番号:T00109291

 台湾の公用休暇(中国語:公暇)は「労働者休暇申請規則」で定められた有給休暇の一種です。公用休暇の適用事由は一つの法律で定められているものではないため、公用休暇が適用されるかどうかは関連法規を逐一確認しなければなりません。つまり、それぞれの法律で公用休暇としなければならない旨が明示されていない限り、公用休暇を与える必要はないとお考え下さい。
 さて、下記は実際に日系企業で社員から申し出があった公用休暇の取得事由です。皆さんは公用休暇の適用要否を正しく判断できますか?

◉事例(一)
社員:部長、誠に申し訳ございませんが、来月末は技術士の技能検定を受けますので、公用休暇を申請させて下さい。
部長:来月末?その日は店舗の催事があるよね。
社員:はい、ですが、この検定試験は年に1度しか開催されておらず、今回を逃すと次は1年後になります……。また、検定に合格できたら、業務にも役立ちしますので、何とかご承認いただけないでしょうか?
部長:しょうがない。休暇の申請については了承した。でもこれは会社の指示ではないから公用休暇ではなく、有給休暇や私用休暇を申請すべきなのでは?
社員:いいえ。会社の業務に関連する技能検定を受けるための公用休暇は法律で認められています。
部長:え!どの法律だ?
社員:労動部の法解釈です。こちらをご覧下さい。
<社員が提示した法解釈の要旨>
職業資格制度は企業の技術水準向上を図るために、労働者の学習意欲を促進することを目的としているため、労使双方互いにメリットが得られる。よって、その検定が職務と直接関連性がある場合は、公假を与えるものとする。

◉事例(二)
<背景>
Y社では年に1度、社員旅行を福利厚生として実施していて、毎年日本に行っている。
社員:総経理、私の国籍がベトナムであることから日本への渡航にはビザの申請が必要です。外交部で手続きをする必要があるため、公用休暇を申請させて下さい。
総経理:いやいや、これは個人的な用事だから公用休暇として認められないよ。
社員:社員旅行のための手続きは「公務」に該当しますので、公用休暇の取得条件を満たしています。国籍の違いによって私だけ自分の有給休暇を消化しなければならないのは不公平です。
総経理:一理あるけど、本当なのか...?

◉解説
 上記のケースはいずれの場合も公用休暇を与える必要ありません。まず事例(一)について、法解釈を見る限りは一見適用されるように思われますが、この法解釈は会社の指示によるものを適用対象としてなされたものです。よって、会社にとって重要な仕事と試験日が重なった場合でも、会社側は仕事を優先するよう要求することができます。
 台湾では、労動関連法令の規定について疑義が生じた場合、企業より中央主務機関である労動部に質問書を提出して解釈を求めることが可能です。同解釈は、会社が指示した検定の試験を前提とした質問に対する回答となりますが、労動部が公表している解釈令にはその背景が記載されていません。そのため、誤って理解されることも多いです。本件に限らず、背景を理解せずに解釈令に記載された内容を鵜呑みにすると、思わぬ落とし穴に落ちてしまう可能性がありますので、ご留意下さい。
 一方、事例(二)についても、社員旅行は福利厚生の一環として実施しているものであって、会社が強制的に参加させるものではありません。また、法律による特段の定めもありませんので、こちらも公用休暇を与える必要はありません。
 尚、法律で定められている公用休暇を認めなければいけない状況としては、以下のケースが挙げられます。

①会社が関わる裁判へ出廷する場合
(行政院労工委員会(77)台労動二字第022765号函)
②退役後の男性が対象となる教育召集、及びそれに伴う健診、抽選の実施期間、並びにそれらに必要な往復移動時間
(兵役法施行法第43条、徵兵規則第37条、行政院労工委員会(76)台労動字第4464号函)
③法令に基づく健康診断を受ける場合
(職業安全衛生法、労働者健康保護規則)
④労使会議に参加する場合
(労資会議実施弁法第12条)
⑤勤務中に行わなければならない組合業務がある場合
(公会法第36条)
⑥職工福利委員会に参加する場合
(行政院労工委員会(86)台労福一字第011538号函)
⑦会社の指示のもとで技術検定を受ける場合
(行政院労工委員会(74)台內労字第311984号函)

 

 

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