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労務コンサルタントの
事件簿48「労災療養中のテレワークは
違法となるのか?」


コラム 人事労務 作成日:2021年10月22日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿48「労災療養中のテレワークは
違法となるのか?」

記事番号:T00109293

 日系企業のC商事に勤務する営業担当者のAが顧客訪問の途中で交通事故に遭い、両膝をぶつけ怪我をしてしまった。その後しばらくしてから、3週間の休養が必要との旨が記載された医師の診断書を付けて公傷休暇の申請があった。

管理部長:総経理、大変です!営業のAさんが外出中に怪我をしたため、3週間休みをとるそうです。しかも労災にあたりますので、有給の公傷休暇になります。
総経理:なんだと!怪我は大丈夫なのか?
管理部長:幸い両膝を地面にぶつけただけみたいですが、通勤や営業訪問を続けることは困難かもしれません。
総経理:そうか。有給で3週間の休暇とは困ったな…。膝に無理を掛けない範囲で自宅勤務してもらえないだろうか?パソコンなど必要なものがあれば、手配することはできるだろう?
管理部長:そうですね!かしこまりました。そのようにいたします。
 後日A氏は離職したが、その後、会社が公傷休暇の申請を拒否して休ませなかったことを労動局へ訴え、それ故に怪我が悪化したと責任をなすりつけたのだ。同社はこれを受け、A氏との間で労使争議仲裁会議が行われることになった。

◉解説
 両足に負担がかからない自宅勤務は一見正当に思えますが、実は法律違反となり得るのです。
 社員が業務中に交通事故に遭った場合、その事故が信号無視等の違法行為によるものではない限り、労働災害として認められる可能性は非常に高いと言えます。労働災害の認定は労災給付の支給を行っている労工保険局の審査によって判断されますが、当局が労働災害に認定すれば、会社は「労働者休暇申請規則」に従い、働けなくなった期間を公傷休暇として扱わなければなりません。
 また、公傷病休暇が適用される労災治療期間というのは、治療、療養、リハビリ期間が含まれます。治療中だけではなく、療養、リハビリのためであっても、社員は公傷病休暇を要求することが可能なのです。同社は本人の同意を得た上で自宅勤務をさせたものの、A氏は立場的に断れなかったと主張したため、会社にとっての不利な状況は変えられませんでした。
 本件において致命傷となってしまったのは、自宅勤務でも同様な休養がとれるという会社の一方的な判断だったと考えます。本来今回のような状況で自宅勤務により怪我が悪化する確率はかなり低いものと推測できますが、残念ながら会社側はそれを証明することができません。
 しかし、決して自宅勤務をさせてはならないということではありません。もしも事前に担当医師や職業傷病科を設置している病院(公傷門診)の医師に相談の上、その了承を得ていたら、おそらく違う結果になっていたことでしょう。

 

 

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