記事番号:T00130687
皆様の時間を「ビジネスのヒント」へ。本コラムはワイズ独自調査から台湾市場のリアルを読み解きます。第22回は、次世代技術「Micro LED」業界で見られる、台湾企業ならではの「ボトルネック工程のプラットフォーム化」戦略に迫ります。
台湾のパネル産業は主力市場の成長停滞や激しい価格競争に直面しています。加えて、市場に普及したOLED(有機EL)も輝度や耐久性の課題から、AIデバイスや次世代モビリティが求める性能要件を完全には満たせていません。
こうした市場と技術の限界を突破する次世代技術として、マイクロメートル単位のLEDチップが自発光する「Micro LED」が注目を集めています。
ボトルネック工程を「業界のプラットフォーム」へ転換
Micro LED製造における主要な技術的課題の一つは、微細なLEDチップを基板へ高速かつ高精度に配置する「巨量移転(Mass Transfer)」工程にあります。
この課題に対し、台湾のリーディング企業である錼創科技(PlayNitride)は、自社での技術独占にとどまらず、業界全体へソリューションとして提供するアプローチを採っています。具体的には、中間半製品(COC)の供給にとどまらず、他社に対する工場ラインの設計・建設サービス(Turnkeyソリューション)の提供や、群創光電(Innolux)などへ自社開発の製造設備を販売する事業を展開しています。

大規模な自社設備投資による製造リスクを抑えつつ、課題となる工程技術を「業界のプラットフォーム」として提供することで、市場全体の拡大を自社の収益に結びつけるビジネスモデルを構築しています。
成長市場の裏に潜む「専用設備不在」という壁
2019年の量産ライン稼働以降も、Micro LED市場の成熟には「専用設備の不在」という課題が残っています。既存のLED設備では精度が足りず、半導体設備ではコストが高すぎるため、専用設備の共同開発が業界全体で求められています。
当社の調査によれば、日系企業の部材や設備は品質面で高く評価されています。ただ、黎明期ゆえの市場規模の小ささから、日系企業が早期の共同開発を見送るケースも少なくありません。その結果として、初期の共同開発体制や、将来の業界標準(デファクトスタンダード)づくりに関わる好機を見落としがちになっているのが現状です。
経営へのヒント
黎明期の市場は目先の売上規模こそ小さく見えますが、早期に参入して専用設備の共同開発などに携わり、技術規格や供給網のハブ(デファクトスタンダード)を握ることで、その後の市場成熟時に利益を享受することが可能になります。
また、多くの製造業が陥りがちな罠は、自社のコア技術を過度にブラックボックス化し、「自社工場での自前製造」にこだわりすぎることです。自社の技術を単なる「完成品の販売」として見るだけでは不十分です。
「ボトルネックの解消=コスト」という過去の認識から脱却し、それを業界標準へと昇華させて競合さえも自社の顧客に変えていく視点が重要です。自社の立ち位置を再定義することで、新たな市場の開拓やビジネスモデルの創出が期待できるでしょう。
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