記事番号:T00130524
■「イメージ」を形にする武器
プロジェクト定例会の空気は、かつてないほど前向きな熱を帯びていた。「フローが20種類まで減ったか。…いや、君たちは本当にすごいね」手元の資料を眺める長島総経理の声は弾んでいた。
新たな『決裁権限表』の制定により、長島自身の決裁機会は大幅に整理された。これは単に彼の負担が減るだけでなく、組織全体の「決裁スピード」が劇的に向上することを意味していた。
しかし、一息つく間もなく李経理が次なるフェーズを告げる。「業務フローの見直しは終わりました。次はいよいよ、自分たちの手でアプリを作れるようにkintone(キントーン)を学びます」
メンバーたちの目がギラリと光った。
配られた教育課程表には、代理店から招く講師による「4日間、各4時間」の集中講義が記されている。すぐにざわめきが起こり、コウが不安げに挙手した。「質問です。…私たちは、アプリ作りは全くの未経験です。たった4日間で本当に形になるのでしょうか?」
李は穏やかに、しかし力強く応じた。「そうですね、アプリ作りは初めてでしょう。でも、あなたたちは『業務を熟知』しています。以前も言った通り、IT化はイメージの世界。kintoneという道具の使い方を覚え、それを使って業務をどう変えたいかを描ければアプリは必ず作れます」
その言葉には李なりの希望的観測も含まれていたが、確かな裏付けもあった。その実現のために講師とは入念に打ち合わせをしたのだから。
「初日は基本動作。2日目からは実際のアプリ作成演習。そして3、4日目には本番で使う申請アプリを自分たちで作ります」李は簡潔に説明した。
「…業務フローだって、最初は右も左もわからなかったけど出来たんだ。アプリだって、きっと作れる」自分に言い聞かせるように呟いたモエの言葉に、他のメンバーも覚悟を決めたような表情で頷いた。不安を抱えながらも、彼らの瞳には「自分たちの手で会社を変える」という当事者としての光が宿っていた。
■静かなる異変
定例会の後、李はかつて1度言いかけて飲み込んだ話を、ついに長島へ切り出した。「総経理、少し気になることがあります。…ここ1カ月、社内のパソコンが相次いで故障しています。これまでに7台。すでに2台は入れ替えましたが、この頻度は異常ですわ」
「…何か原因に関連性があるのかもしれないな」長島は眉をひそめた。単なる故障にしては時期が重なりすぎている。直感的に不吉な予感がした。「一度、専門の業者を呼んで調べてもらってもよろしいでしょうか?」「ああ、そうしてくれ。頼むよ」長島は即答した。
台北のオフィスに漂う空気は、期待と不穏が複雑に混ざり合ったものへと変わりつつあった。

オフィス業務にkintone
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宇都宮武則
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