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第174話 ゼロからのデジタル化(13)研ぎ澄まされる刃


コラム 経営 作成日:2026年8月25日

経営者が踏み出す”かんたんDX”

第174話 ゼロからのデジタル化(13)研ぎ澄まされる刃

記事番号:T00130387

■新たなピース

 プロジェクト開始から1カ月。幹部会の席上で長島総経理は現状を報告した。「進捗は2週間の遅れが出ています」

 包み隠さぬ報告に営業部長の劉協理が身を乗り出した「原因は人手ですか?」

 「…その通りです」現状の可視化までは漕ぎ着けたが、そこからの「見直し」に想像以上の工数を取られていた。

 「ならば、うちのケイをメンバーに加えてもらえませんか?実は本人から手伝いたいと申し出があったのです」劉の提案に長島は驚いた。営業部内勤のケイといえば、いつもデスクで物静かに淡々と事務をこなしている印象だ。

 「彼女は営業部のみんなが一目置くほど、仕事が早くて正確なんですよ」と劉がつけ加えた。

 そこへ李経理が補足するように微笑んだ。「ケイさんはメンバーのハルさんと大の仲良しですからね。ハルさんから、現場の熱量を聞かされたのでしょう」

 「いずれ営業部の改革があります。今のうちに彼女にノウハウを吸収してもらうのは得策です」李の即断に、長島も「ぜひお願いします」と力強く応じた。

 そのやり取りの間、連副総経理だけは相変わらず無関心を装い、窓の外に広がる台北の青空を遠く眺めていた。

■フレームワークを信じて

 新メンバーケイを加えた5名の「実働隊」は、前回の失敗を糧に作戦を練り直した。個別に進めていた見直し作業を一旦止め、1つのフローに対して全員で知恵を出し合う総力戦に切り替えたのだ。

 彼らが立ち戻ったのは、講習で学んだ業務改善の4原則『ECRS(イクルス)』という、E排除→C結合→R再配置→S簡素化の順番で検討するフレームワークだった。

 「まずは『E(排除)』から考えよう。この小口費用の3種類、そもそも分ける必要ある?」。

 「ないね。決裁ルートが同じなら、『C(結合)』して1つにできるはずだ」

■権限の移譲、そしてスリム化

 現場のフローが整理される一方で、最も困難な「決裁プロセスの適正化」は長島と李が引き受けた。

 20年前の「すべて総経理が決裁する」という歪な構造を解体し、新たな『決裁権限表』を編み出していく。

長島「この金額以下の部内経費なら各部長で完結。そして高額なものだけを私が決裁する。どうだろう?」。

 長島の決断により、幾重にも分かれていた複雑なルートは洗練された。

 結果として、当初34種類あった既存の業務フローは、無駄を削ぎ落とした20種類へと集約された。それは単なる数字の減少ではない。組織の贅肉を削ぎ、デジタルという舞台に上がるための引き締まった「筋肉」が作られつつある証だった。全員が深く頷いた。

 李はそれ以上、何も言う必要はなかった。失敗から本質を学び取った彼らに、確かな成長の兆しを見たからだ。

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宇都宮武則

宇都宮武則

ワイズコンサルティング社システム室長兼ワイズシステム社チーフシステムエンジニア

 前職ではIT企業の副総経理を努め、50社以上のシステム構築に携わる。2015年よりワイズコンサルティングに入社し、社内ではITに関するドラえもんと呼ばれている。クライアントのIT課題に豊富な経験を活かしたソリューションを提案している。SAP HANA導入コンサルから、リーズナブルなシステム化までクライアントの要望に対応が可能。(言語)日本語◎・中国語△

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