記事番号:T00129991
■浪費される時間
月末月初の祭りの中。
「総経理、今月分のレシートをいただけますか?」秘書の声に、長島総経理はカバンからタクシーと接待の領収書や高速鉄道のチケットが詰まった小物入れを差し出した。
社員の6割がおこなう、この「費用精算」こそ、生産性を奪う伏兵だった。役職者はスタッフに丸投げできるが、一般社員は自らレシートを握りしめてエクセルに入力しなければならない。中には精算業務だけで半日を費やす社員もいる。
デスクに山積みの書類を眺め、長島は改めて決意を固めた。
(なんとかしないとな…。このような非生産的な時間は一刻も早く取り除かなければ)
■捨てられた書類、固まる意志
プロジェクト定例会の日。総経理室に施錠して保管されていた「申請書の束」が再び会議室に運び込まれた。
メンバーたちは昨日までの過酷な5営業日の疲れを引きずりつつも、テキパキと申請書を起票部所や決裁者ごとに分類していく。1時間ほどで次ステップの「業務フロー作成」に向けた準備が整うと、長島は早めの解散を命じた。
2人きりになった室内で李経理が切り出した。「総経理。実は、前回の定例会の前に…集めた申請書がゴミ箱に捨てられておりましたの」
長島は息を呑んだ。なぜ李がわざわざ自分の部屋に書類を保管させたのか、その理由をようやく理解した。
「…これまでのやり方を変えられることへの、恐れと反発かな」嘆息する長島が最も案じたのは、若きプロジェクトメンバーたちの動揺だった。しかし、李の答えは意外なものだった。
「いいえ。むしろ彼らの団結は強まりました。自分たちのやっていることは、それほど大きな変化なのだと自覚したようです」
安堵した長島は、力強く頷いた。「業務改革が、結果的に社員全員に恩恵をもたらすことをもっと周知していこう。それが私の仕事だ」
■「誰一人取り残さない」覚悟
李との会話は組織の核心へと及んだ。社内にはデジタルに馴染みのある社員もいれば、長年アナログで支えてきたベテランもいる。特に社歴の長い者ほどデジタル化への拒絶反応は強い。
「デジタル化から、一人の社員も取り残さないようにしよう」それが長島の出した結論だった。一部の人間だけが使いこなすツールではなく、全社員のITリテラシーを底上げする。
「それから…」李が何かを言いかけ、ふと口を噤んだ。長島の顔に滲む疲労の色を見て、彼女は微かに首を振った。「いいえ、大したことではございません。今は大丈夫です」
李が飲み込んだ言葉が何だったのか、今は知る由もなかった。外は台北の夜景が美しく輝いているが、その光の届かない場所に、次なる「壁」が潜んでいることを2人はまだ知らなかった。

オフィス業務にkintone
●詳しくはこちら
宇都宮武則
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722