記事番号:T00129587
■決裁権限という名の背骨
「いや、驚いたよ。あの資料、中里副社長──当時の董事長のサインが入っていてね」。長島総経理は画面越しの妻に、数日前の「冊子発掘」の話をした。
「お目当てのものはあったの?」「あったにはあったが…」彼は肩を落とす。「当時はまだ10数名の組織だったんだろう。あらゆるものの最終決裁者が総経理になっていたんだ」。決裁の「背骨」が折れていることを痛感していた。「やはり、決裁の流れを明確にするルールが必要だよな?」「作ってください、決裁権限表」。妻の言葉はいつだって迷いを断ち切ってくれる。
それから2日ほど熟考した翌日、2時間早く出勤した長島は、朝日が差し込むオフィスでAIや検索エンジンを駆使し、決裁権限表の定義から思想を怒涛の勢いで脳内にインプットしていく。
長島は自信満々に李経理を呼び寄せた。「例の押印問題だがね。解決の鍵は『決裁権限表』にあるんだ」。教え諭そうとする口調を堪え「決裁権限表はわかりますか?」と一歩引いて尋ねてみる。
「もちろんです」李は頼もしく頷いた。「来週の定例会で申請書が揃いましたら、それらを整理した上で、改めて『決裁権限規則』として明文化してはいかがでしょうか」。それは長島が導き出した答えと寸分違わぬ提案だった。
■想定外と次なるステップ
想定外の「決裁権限規則作り直し」という作業が増えたが、長島の心は晴れやかだった。20年も放置されていた問題が見つかった。これはピンチではなく進化への好機だ。
李によれば申請書の収集は順調だという。しかし、集まった中には「幽霊申請書」も多い。大昔に使われていたもの、1度きりの例外もの…。それらを仕分け、統合していく作業が待っている。
長島「その後の業務フロー作成だが、彼らには初めての経験だろう。次回の定例会の翌日に講習会を開こう」
「これで講習会用の飲み物とおやつを用意して」と李へポケットマネーを手渡す。李はいたずらっぽく微笑んだ。「総経理はいつものタピオカミルクティーの甘めとエッグタルトでしたわね」。妻から「糖分を控えろ」と厳命されている長島だったが、こればかりは最大の楽しみなのだ。
■静かなる妨害
プロジェクト会議を午後に控えた昼休み。昼食から戻るとメンバーの1人、コウが首を傾げた。「あれ?ここに置いた書類、知らない?」「集めた申請書の束だろ?会議室に運んだんじゃないのか?」とハルが答える。
コウ「いいえ、運んでいない。さっきまで確かに置いてあった」。机の上に山積みになっていたはずの膨大な「申請書の原本」が消えていた。
単なる紛失か、それとも……。台湾拠点の業務改革という大きなうねりに冷ややかな影が差し込もうとしていた。

オフィス業務にkintone
●詳しくはこちら
宇都宮武則
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722