記事番号:T00129181
■走り出した「行動力」
長島高貴という男を語る上で欠かせないのは、何よりも「強い行動力」だ。思い立ったら吉日、大まかなプランが固まる頃には、すでに一歩目を踏み出している。その反面、緻密な計画性には甘さがあるのだが、彼は「走りながら軌道修正すればいい」と考えるタイプだった。
長島総経理「さて。どこから始めるか?」
総経理室の壁に鎮座する大きなホワイトボードの前に立っていた。そこには、手書きの「組織図」が貼られている。ふと、オフィスを見渡す。この会社では未だにホワイトボードが情報の「王」として君臨していた。
営業部では外出先と帰社時刻がマーカーで書き込まれ、管理部では仕事のタスクが狭しと付箋で貼られている。購買部に至っては、巨大な青い枠の表の中に仕入先、製品番号、金額、納期がびっしりと書き込まれていた。
もちろん、パソコンが普及していないわけではない。7年前に導入されたデスクトップが並んでいる。ノートパソコンを持ち歩いているのは長島自身と営業部だけで、副総経理に至ってはパソコンに触れたことすらないのが現状だ。
用途はせいぜいメールとOffice(オフィス)ソフト。唯一、会計課だけが財務会計システムを使っている、デジタル化とは程遠い「アナログの王国」がそこにはあった。
長島は再び組織図に視線を戻した。購買部は連副総経理、営業部は劉協理、そして管理部は長島自身の直轄となっている。(待てよ……)昨夜の妻との会話が鮮やかに脳裏に蘇った。
本社の管理部で最初に導入され、成果を上げたのはkintone(キントーン)による社内申請システムだった。そして本社から指定されているツールも、まさにそのkintone(これだ…これならいける)。
長島にとって、システム化への挑戦はこれが初めてだ。しかし、本社に成功事例があり、なおかつ同じツールを使うのであれば、これほど心強いことはない。
■半年の「第一歩」
長島「方向性は決まった。管理部の社内申請から着手する」自分の直轄である管理部なら、他部所よりも意思疎通がスムーズ。指示命令もやりやすい。彼はカレンダーを確認した「次の経営会議は今週の金曜日か…」。本社への提案は必須だ。長島はそこから猛烈な勢いで資料作りに没頭した。
熱量を込めた資料を手に、彼は経営会議に臨んだ。結果は――「承諾」。ただし1点だけ修正が入った。長島総経理が提示した1年という工期に対し、本社は「半年」での完遂を求めてきたのだ。
本社いわく「今回の取り組みは業務改革の第一歩に過ぎない。ここで時間をかけるわけにはいかない」。
その言葉は期待の裏返しでもあり退路を断つ宣告でもあった。
台北の湿り気を帯びた風が窓から入り込む。長島の「半年間の戦い」が、いま静かに幕を開けた。

オフィス業務にkintone
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宇都宮武則
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