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第165話 ゼロからのデジタル化(4)アナログの王国


コラム 経営 作成日:2026年6月23日

経営者が踏み出す”かんたんDX”

第165話 ゼロからのデジタル化(4)アナログの王国

記事番号:T00129181

■走り出した「行動力」

 長島高貴という男を語る上で欠かせないのは、何よりも「強い行動力」だ。思い立ったら吉日、大まかなプランが固まる頃には、すでに一歩目を踏み出している。その反面、緻密な計画性には甘さがあるのだが、彼は「走りながら軌道修正すればいい」と考えるタイプだった。

長島総経理「さて。どこから始めるか?」

 総経理室の壁に鎮座する大きなホワイトボードの前に立っていた。そこには、手書きの「組織図」が貼られている。ふと、オフィスを見渡す。この会社では未だにホワイトボードが情報の「王」として君臨していた。

 営業部では外出先と帰社時刻がマーカーで書き込まれ、管理部では仕事のタスクが狭しと付箋で貼られている。購買部に至っては、巨大な青い枠の表の中に仕入先、製品番号、金額、納期がびっしりと書き込まれていた。

 もちろん、パソコンが普及していないわけではない。7年前に導入されたデスクトップが並んでいる。ノートパソコンを持ち歩いているのは長島自身と営業部だけで、副総経理に至ってはパソコンに触れたことすらないのが現状だ。

 用途はせいぜいメールとOffice(オフィス)ソフト。唯一、会計課だけが財務会計システムを使っている、デジタル化とは程遠い「アナログの王国」がそこにはあった。

 長島は再び組織図に視線を戻した。購買部は連副総経理、営業部は劉協理、そして管理部は長島自身の直轄となっている。(待てよ……)昨夜の妻との会話が鮮やかに脳裏に蘇った。

 本社の管理部で最初に導入され、成果を上げたのはkintone(キントーン)による社内申請システムだった。そして本社から指定されているツールも、まさにそのkintone(これだ…これならいける)。

 長島にとって、システム化への挑戦はこれが初めてだ。しかし、本社に成功事例があり、なおかつ同じツールを使うのであれば、これほど心強いことはない。

■半年の「第一歩」

長島「方向性は決まった。管理部の社内申請から着手する」自分の直轄である管理部なら、他部所よりも意思疎通がスムーズ。指示命令もやりやすい。彼はカレンダーを確認した「次の経営会議は今週の金曜日か…」。本社への提案は必須だ。長島はそこから猛烈な勢いで資料作りに没頭した。

 熱量を込めた資料を手に、彼は経営会議に臨んだ。結果は――「承諾」。ただし1点だけ修正が入った。長島総経理が提示した1年という工期に対し、本社は「半年」での完遂を求めてきたのだ。

 本社いわく「今回の取り組みは業務改革の第一歩に過ぎない。ここで時間をかけるわけにはいかない」。

 その言葉は期待の裏返しでもあり退路を断つ宣告でもあった。

 台北の湿り気を帯びた風が窓から入り込む。長島の「半年間の戦い」が、いま静かに幕を開けた。

 

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宇都宮武則

宇都宮武則

ワイズコンサルティング社システム室長兼ワイズシステム社チーフシステムエンジニア

 前職ではIT企業の副総経理を努め、50社以上のシステム構築に携わる。2015年よりワイズコンサルティングに入社し、社内ではITに関するドラえもんと呼ばれている。クライアントのIT課題に豊富な経験を活かしたソリューションを提案している。SAP HANA導入コンサルから、リーズナブルなシステム化までクライアントの要望に対応が可能。(言語)日本語◎・中国語△

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