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第162話 ゼロからのデジタル化(1)その一歩は、あまりに重く


コラム 経営 作成日:2026年6月2日

経営者が踏み出す”かんたんDX”

第162話 ゼロからのデジタル化(1)その一歩は、あまりに重く

記事番号:T00128803

 午後の陽光が差し込むオフィスに賑やかな声が響く。台湾T精工の山本総経理が帰任の挨拶に訪れていた。その傍らには緊張した面持ちの男性が控えている。

山本総経理「いやあ、本当に4年間、お世話になりましたよ!」独演会はとどまるところを知らない。

 「ワイズ経営塾『台湾新任編』がなかったら、今頃どうなっていたことか。生活からビジネス習慣まで、あの講義のおかげでなんとか馴染めました。何より、代えがたい仲間ができた。…そうそう、ゴルフも教えていただきましたっけ! やっとスコア90を切ったというのに、日本へ戻ったらプレーする機会も減るんでしょうなあ。それから、アレも……」。気さくでお喋り好き。それが山本の魅力ではあるが、このままでは1時間が経過しても本題に入れない。

 タイミングを見計らい差し込んだ「山本総経理、そちらの方が後任の方…ということでよろしいでしょうか?」「そうでした、そうでした!」山本は苦笑いしながら隣の男性を促した。

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 「来月1日付で総経理に着任いたします長島高貴と申します。日本の名刺で失礼いたします」。名刺には長い肩書きが並んでいた。長島氏が自己紹介を続けようとするのを制するように山本が身を乗り出した。「実はね、長島には大事なミッションがあるんですよ」。

■業務改革5カ年計画の波紋

 長島が引き締まった表情で語り始めた「2023年度の5カ年計画に『業務改革』が盛り込まれまして、中核に全社デジタル化が掲げられました。本社を皮切りにシステム更新が始まっています」。

 よくあるデジタル変革(DX)の話だ。

長島「2025年から一年かけて名古屋工場のシステムを私を含めた4名が選出され、無事に稼働できました。今年、2026年は国内24カ所の販売支店、そして台湾とカンボジア拠点の番です」。

山本「計画通り順調じゃないか」

長島「そして、名古屋工場での経験を買われ台湾とカンボジアへそれぞれ1人ずつ派遣されることになりました」。

 山本がガハハと高笑いをした「いやあ、私はITが一番の苦手分野でしてね。経営陣もそこを見越して、私を下げて長島を送り込んできたわけですよ」。

 長島が苦笑まじりに少しだけ本音を漏らす「業務には精通していますが、デジタルだ、ITだと言われても、中身はほとんど分からないんです」

山本「大丈夫、キミならできるよ! 長島くんはまだ若いんだから、すぐに覚えられるよ!」何の根拠もない気休めを言い放つと、無邪気に笑った。

 これから始まる「ゼロからのデジタル化」という荒波を前に、新任総経理の長島は覚悟を決めたような、あるいは途方に暮れたような、複雑な表情で静かに座っていた。

 

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宇都宮武則

宇都宮武則

ワイズコンサルティング社システム室長兼ワイズシステム社チーフシステムエンジニア

 前職ではIT企業の副総経理を努め、50社以上のシステム構築に携わる。2015年よりワイズコンサルティングに入社し、社内ではITに関するドラえもんと呼ばれている。クライアントのIT課題に豊富な経験を活かしたソリューションを提案している。SAP HANA導入コンサルから、リーズナブルなシステム化までクライアントの要望に対応が可能。(言語)日本語◎・中国語△

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