ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第7回 殷キ台湾高速鉄路董事長


コラム 経営 台湾事情 作成日:2007年7月23日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第7回 殷キ台湾高速鉄路董事長

記事番号:T00001646

 
 大手不動産開発業者・大陸工程(コンチネンタル・エンジニアリング)の董事長で、台湾高速鉄路の董事長である殷?氏は台湾を代表する女性企業家で、台北101の陳敏薫董事長と並んで女性経営者にとっての憧れの存在だ。

 殷?氏は、中華民国政府成立初期に財政部次長を務めた殷汝驪氏(早稲田大学卒)の孫で、翼東防共自治政府の殷汝耕主席の姪孫に当たる。大陸工程を創立者である父の殷之浩氏から受け継ぐや、若返りをはじめとした企業内改革に着手した。株式市場への上場を果たし、それまでの受注に応じて建設するという業態を自ら積極的に開発案件を推進する形に転換。当時で6億9,000万台湾元もの利益を上げた。

 1997年、台湾初のBOT(開発、運営、譲渡)案件であった台湾高速鉄道を、台湾高鉄聯盟(大陸工程、東元、太平洋電気纜、長栄、富邦)を組織して受注。10年を経て完成した今、高鉄によって台湾南北の一日生活圏が実現した。

 殷?氏は中学から大学までを米国で学んでおり(カリフォルニア大学ロサンゼルス分校卒)、思考と判断と行動は米国教育の影響が大きく、情をからめやすい華人のそれとはかなり異なっている。

 男女を問わず抜擢し、管理職者には高い専門性と判断力、そして責任感を求める。「人生で唯一変わらないこと、それは我々が変革し続けることだ」と語るが、それは高鉄の建設や運営を海外から見ても一流のものにするために、香港の都市交通システム(MRT)と香港国際空港の専門家チームを反対を押し切って導入したところからも見てとれる。

一切の妥協を排す

 工程パッケージの発注から、契約の執行、実際の建設、駅の運営管理まで、すべて国際水準での遂行を求めたとたん、台湾の請負業者、建設業者、そして大陸工程の内部からも「厳しすぎてついていけない」と悲鳴が上がった。殷?氏は執行グループへのサポートを続ける一方、求めた基準については一切の妥協を許さず、仕事を続けさせた。
T000016461

今月27日からは1日往復74便に増発され、さらに便利になる
(写真提供/旅々台北.com; http://www.tabitabi-taipei.com/youyou/200704/report/index.html

 高鉄にとって最大のヤマ場は、99年にそれまでの欧州システムを捨てて、日本システムの導入に切り換えると決断したことだろう。2,000人もの死者を出した同年9月の台湾中部大地震の結果、平地を直線で走る欧州の高速鉄道よりも、地震国で山地が多く、かつ無事故の実績がある日本の新幹線を採用しようという政治的判断が働いたとされているが、これによって高鉄は毀誉褒貶にさらされ、04年には欧州連合に6,500万米ドルもの賠償金を支払うことが決まった。

 なお、「高鉄のシステムは日本と欧州の混合体」と報じられることについては、「車体や内部の機電システムなど、核心システムはすべて日本のものを採用しており、いわゆる『混合システム』は存在しない」と語っている。

 「人生の最大の喜びは安逸からではなく、ストレスから来る」も殷琪氏の言葉だが、高鉄を受注から開業まで漕ぎ着けたこの42歳から52歳までの10年は、まさに一つ、また一つと難問に取り組むストレスとの戦いの連続だった。「だが、逃げずに一つ一つ取り組まなくてはならない。挫折のない人生がどこにあるだろうか。挫折はつきものである以上、前に進まなければならない」と味わい深い言葉で企業経営を語っている。

ワイズコンサルティング 荘建中

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。