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第8回 張忠謀TSMC董事長


コラム 経営 台湾事情 作成日:2007年7月30日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第8回 張忠謀TSMC董事長

記事番号:T00001802

 
 「台湾半導体業界のゴッドファーザー」の異名を持つ張忠謀氏が、台湾積体電路製造(TSMC)を設立したのは1987年のことだ。「ウエハーファウンドリー」のビジネスモデルを初めて提起した当時は狂った発想だと批判されたが、張氏の長期的で幅の広い思考と戦略、強力な実行力によって20年後の今、「イノベーション」と「ビジネスモデル」堅持の正しさが証明されている。TSMCはよく知られているように世界最大のファウンドリーであり、コンピュータ、携帯電話を問わず、半導体の最大の供給企業だ。

 ファウンドリーは、自社ブランドの製品を一切生産せず、顧客メーカーの要求する半導体を製造するビジネスモデルだ。顧客にとっては、製品の設計周期や検査期間を短縮でき、コスト低減と市場供給までの時間を短縮できるメリットがある。設計と製造を分離する発想によって、IC設計会社は工場建設に大規模な投資をする必要がなくなり、この面でのリスクがなくなった。TSMCも自社の目標を、半導体メーカーやIC設計メーカーが求める特殊応用ICの、製造技術や品質、良品率の向上に絞れるようになった。この結果、技術の向上、生産ラインの効果的使用によってコスト削減が進み、顧客に対しより低い価格で製品を提供できる好循環が生まれた。

 インターネットを利用した「バーチャル・ファブ」を始めたのも同社が最初だ。顧客はインターネットを通じて製品の発注や、発注製品の生産進度の把握、データベースの閲覧などができ、クレームのある場合もネットを通じて専門の担当者が対応する。欧米の顧客も24時間、瞬時に商談、連絡が可能だ。

 なお、同社は取引先からのキックバックは絶対に受け取らず、100%製品内容によって価格を決定する。取引先はTSMCを特別扱いする必要がなくなり、そこから信頼関係が生まれる。


「将来像の提起」が重要

 張氏は、「リーダーにとって最も重要なことは、将来像を提起することだ」と語っている。それを実現するための戦略も必要で、そのためにはリーダーは自信に満ち、部下や顧客から信用を受けて、「人を動かす」ことができなければならない。

 いわゆる「企業文化」は、企業の成長とともに自然発生的にでき上がるものではなく、創業者または執行長がルールを決定し厳しく守らなければならない、というのも張氏の考え方だ。TSMCは張氏の剛毅、冷静、謹厳、学習好き──という個性を反映して「学習型組織」の企業に育ち、自分から積極的に勉強しない人材は淘汰される社風が形成された。規律重視、仕事で要求される厳しさは有名だ。

 張氏は社内では、「張大帥」というあだ名がある。怒る時はキセルを机に叩き付けて怒り、怒られた部下はその迫力を二度と忘れられない。かつて多くの人が張氏が顔色を変えるや、足に震えがきたという。

 ある製造プロセスの管理職者は、「我々は1台数億元の製造設備を使い、製品のウエハーも1枚100万~200万元する。ちょっとした不注意が大きな損失につながるため、規律が重要なのだ」と社風を説明する。

 TSMCは張氏の個性が強く反映した組織だが、意外にも「いわゆるピラミッド型の組織は好きではない」と語る。環境、時期に応じて求められるリーダーはさまざまで、「流動性に富む」組織でないと、それに対応できないというのだ。「流動性に富む」組織は、同じ階層の人材が互いに管理にし合うもので、これによって問題解決の機会と手段が多くなるという。

 新竹周辺にはTSMCに関するさまざまな話が伝えられている。あるTSMCの社員は、子供が寝る前に3回、「ありがとう、TSMC」と言わせているという。期末ボーナスとして配られる自社株によって、社員は30歳になる前に一戸建てやBMWの車を買うことができ、安定した家庭生活を営める。子供に「ありがとう」と言わせたくなるのも、理解できるというものだ。


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