記事番号:T00002058
華碩電脳(ASUS)の施崇棠董事長はかつて宏碁(エイサー)に15年在籍し、副総経理にまで昇進した。1994年に華碩に移った後、品質、スピード、サービス、イノベーション、コストの追及によって、華碩を押しも押されぬ大企業に育て上げた。
主力製品であるマザーボードの2006年の出荷枚数は5,500万枚に達し、全世界で発売されたデスクトップ型パソコンの3台のうち1台は華碩製品を使っている計算になる。昨年の売上高は5,400億台湾元(約165億米ドル)、今年は7,500億元(約230億米ドル)に達するとみられている。
施氏は、「徹底的に考え、1回で結果を出すのが一流企業。常に忙しいが、ただ穴埋めと火消しに走り回っているのが二流企業」と語る。「深く、遠くを見て、正しい方向と戦略をつかむ」ことが華碩の揺るぎない経営哲学だ。
「動物兵法」で一流企業に
華碩は動物をコンセプトにした、分かりやすい経営目標を掲げることで知られる。以下、代表的な例を紹介する。
1.常山の蛇
頭をたたけば尾が、尾をたたけば頭が、腹をたたけば頭と尾がそれぞれ反撃しようと反応する蛇の敏捷性を例に、「軍隊は敵を挟撃するためには、先陣としんがりが協力し合わなければならない」と説いた「孫氏の兵法」の「常山の蛇」から取った。
ハイエンドのマザーボードを生産していた華碩が、ローエンドメーカ-の攻勢に遭った際、即座にローエンドのサブブランド、華?科技(アスロック)を立ち上げて迎撃しシェアの低下を防いだ。
2.巨獅計画
華碩は厳格な製造工程管理によって、「巨大な獅子であるべきだ」という業界での位置づけ目標を示したもの。「巨」は量、市場シェアを表し、マザーボードの出荷量は2位企業の2倍以上でなければならない。「獅」は品質で、ブランドと製品は、動物界のライオンと同様、トップでなければならないとした。
3.銀豹計画
革新的な発想と技術でにニッチ市場に食い込む戦略を、「銀豹計画」とした。成功した代表例は、遅れて参入したノート型パソコン。女性向けに発売したホワイトシリーズ、カーボン機種、超薄型機種などは華碩が開拓し大きな人気を呼んだ。
施氏は、企業管理にも、動物を持ち出している。
1.リスの精神
リスは冬眠準備のために、必死で餌を貯蔵する。これはリスがこの仕事の意味を知っているためだ。企業においても、社員に目標をはっきり認識させることは重要で、意味のあることだ。
2.ビーバーの協力
ビーバーが集団でダムを建築する時、それぞれが勝手きままに仕事をしていながら、暗黙の了解で完成させていく。まるで独立した請負メーカーのようだ。
3.雁の天賦
雁が集団で長距離を飛行する時、互いに鳴き合って励まし合いながら目的地に着く。管理職者も従業員も、良い点は惜しみなく褒め合って、やる気が出るようにしなければならない。
こうした単純な「動物戦略」が、華碩をIT(情報技術)業界のトップ企業に成長させたまさに原動力だ。
施氏はかつて、「企業組織と人材は偏ってはならない。将棋で言えば王将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵まで全員がそろい、それぞれ適切な位置についていなければならない」と語ったことがある。施氏のこうした理念は、華碩の従業員の一人一人に影響を及ぼし、独特の企業文化を創り上げている。
ワイズコンサルティング 荘建中