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第15回 台塑集団創業者 王永慶氏(1)


コラム 経営 台湾事情 作成日:2007年12月14日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第15回 台塑集団創業者 王永慶氏(1)

記事番号:T00004354

 
 王永慶氏が台塑公司(台湾プラスチック)を設立して今年で50年余りが経つ。台塑集団(台湾プラスチックグループ)の2006年売上高は1兆6,390億台湾元(約5兆6,055億円)、07年は証券会社予測で1兆8,000億元、さらに08年は2兆元に挑戦するという台湾最大規模の製造業グループに成長した。王永慶氏は2006年6月にグループ董事長の座を退き、各グループ企業の董事会運営からも手を引いたが、依然グループ内での影響力は最も強い。

08年10月15日 王永慶氏死去に関するニュースはこちら↓
http://www.ys-consulting.com.tw/news/index.php?action=1&tno=10938

 王永慶氏は台湾において「経営の神様」と呼ばれ、数多くの逸話も残っている。グループ内で最も頻繁に語られるのは「大勢で競争して1元を取り合うとすると、結果はまず外部要因に左右される。しかし、1元の節約は自分さえ努力すればいい。節約して貯めた1元と競争して稼いだ1元に違いがあるか?」と王永慶氏が語ったという逸話だ。

 そこで、今日はこれをモデルに「コストコントロール」についての概略を説明したい。

単位コスト分析の推進

 石油化学業における最大のコストは原料である。台プラでは内部からの優れた提案に対し報奨金を与えるなど、すべての従業員が基本的なコスト概念を持つよう「単位コスト分析」を推進している。全従業員が参与し「製品構成に改善の余地があるのではないか」、「もっと安い供給元があるのではないか」と知恵を出し合う。

 王永慶氏の言う単位コスト分析とは、「例え1ポンドのプラスチック管製造であっても電気代、水道代、人件費を一つ一つ算出する」ということだ。もし損失が出たら、最も基本的な標準コストや原料の配合から始まり、どんな機器を使って標準コストの条件を設定したか、機械の速度、燃料や光熱費の消費量まで、ただちに一つ一つ調査する。もし標準コストでももうけが出ないようであれば、さらに検討、改善を続ける。これこそ王永慶氏が強調する「検討に検討を重ね、改善に改善を重ねる」というやり方だ。

コストを下げるための「3低」文字

 工場建設コストの低減、生産コストの低減、業務コストの低減。これら3つを「3低」と呼ぶ。

1. 工場建設コストの低減

 1980年、台プラは米国テキサス州ヒューストンに世界最大規模のPVCプラスチック工場を建設した。建設コストを下げるため王永慶氏は、計画、設計、機器設置、施行、試運転のすべてを完全にグループ内で行った。すべての設備を台塑機械事業部が台湾で製造した後、アメリカまで運んで設置した。この工場建設に費やしたコストは、米国人が建設した場合の62.5%、日本人の75%だったという。

 また、王永慶氏はかつて「景気が悪いときは、拡充計画に投資するチャンスだ」と語ったことがある。この言葉は、「景気が低迷しているときこそ、企業体質を鍛え上げるチャンスであり、経営者は歯を食いしばって体質改善を実行し、管理を強化しなければならない」ということを意味する。もし余力があるなら有効、有望な計画に投資すれば他社に先んずることができ、ピンチをチャンスに変えられる。

 王永慶氏は、不景気時に新たな投資計画を立てることには、少なくとも工場の建設コストが安くなるというメリットがあり、製品の競争力強化に役立つと考える。さらに経済の好景気と不景気は一定の期間で循環しており、工場建設に1年半から2年かかるとすると、不景気なときに着工すれば完成する頃には景気が回復し、チャンスに乗り遅れずに済むのだという。

2. 生産コストの低減

 生産コストを低減するためには、まず省エネとリストラから手を付ける。1980年、81年の2度、台湾では原油と電気が値上がりした。このとき台プラ関連企業では光熱費が17億元増加し、深刻な負担となった。そこで王永慶氏はグループをあげて「省エネ運動」の推進を図った。例えば、すべての蛍光灯に反射板を取り付け、蛍光灯の数を10万本から半数に減らしつつ、明るさは逆に増した。この反射板取り付けには600万元を投じたが、1年間で7,000万元の節電に成功した。こういった運動を通して台プラ社員全員が努力を重ね、改善を行った結果、この年は金額にして12億6,800万元の省エネ効果を上げ、原油価格および電気代上昇分のコストを相殺することに成功した。

3. 業務コストの節約

 管理業務上の必要にあわせ、台プラは各地に従業員の「招待所」を設置した。「招待所」とは、十数間もしくは二、三十間の客室を持つ小型旅館形式の建物で、通常工場の敷地内に建てられる。内装は壁紙張りでとても豪華とは言えないが、こざっぱりとしていて快適でだ。

 台プラグループ内の各クラスの幹部は、管理業務上の必要から各工場へ出張することが非常に多く、招待所はそうした幹部の宿泊のために作られた。宿泊費と交通費も節約でき、旅館から工場まで往復するための時間も節約できる。まさに「一挙三得」の策と言える。このほか、高級幹部にも高級車を支給しないし、来客にも水しか出さない。台プラはこういった小さな節約の積み重ねによって、業務コスト低減を実現しているのだ。

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参考:第58回 台塑集団創業者 王永慶氏(2)

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