第18回 長栄集団総裁 張栄発氏


コラム 経営 台湾事情 2008年1月11日

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第18回 長栄集団総裁 張栄発氏

記事番号:T00004905

 
 張栄発氏は、1968年長栄海運(エバーグリーン・マリン)を創業し、85年には世界最大のコンテナ船団に育て上げ、世界のコンテナ船海運王となった。さらに89年には、民間では台湾初となる国際線航空会社、長栄航空(エバー航空)を設立した。張総裁率いる長栄集団(エバーグリーン・グループ)は今や、陸、海、空すべての事業を保有する世界でも有数の交通運輸グループへと成長した。

「独裁」的リーダーシップ

 長栄集団は海外に100カ所以上の拠点を持つ。その各拠点の財務および人事は、各事業部のマネージャーにより管理されるが、張総裁からも直接の統括を受ける。拠点の大小にかかわらず、重大事件が発生すれば、直接総裁室と連絡を取ることが可能だ。すなわちグループは2階層の監督システムを持っていることになる。 

 張氏は、企業経営を成功させたければ、設立初期は経営のプロが絶対に必要で、重要な決定は「独裁」的な手法で下し、精力的に事業を推し進め、任務遂行の徹底を目指さなければならないという考え方の持ち主だ。張氏の言う「独裁」とは理不尽な「専制」ではなく、高効率かつ有効な経営モデルには、唯一無二のリーダーが不可欠という意味だ。

鋭敏な観察力で大局をつかむ

 張氏は、身の回りの人物や物事に対し常に注意を払い、好奇心を失わない。例えば、旅館に宿泊した際は、トイレにまで関心を向け、写真を撮って研究を重ねる。これにより、グループでホテルを立ち上げた際、いかに他のホテルの長所を取り入れ、短所を取り除くかを社員に示すことができた。

 また、大局をつかむということに関し、張氏は厳格な調査・立案能力を発揮する。分析により大勢に変化が起きていることが分かれば、2年という期間と100万ドルの資金を費やし、全世界のコンテナ海運市場の需要を調べ上げることもあるのだ。

人材重視、ただし品行方正を要求

 張氏は、「人材が企業最大の資本である」と固く信じている。このため、長栄集団は高給与制度を採用し、従業員の待遇は同業他社に比べ抜きん出ている。

 長栄集団では毎年、公開で採用試験を行い、コネによる入社を許さない。受験資格はその年の卒業者、軍除隊者すべてに与えられる。「我々が欲しいのは白紙だ。他人が半分書き込んだ紙は必要ない」と張氏は強調する。

 会社がフォームを用意した履歴書を応募者から受け取ったあと、その履歴書の書き方で最初のふるいをかける。字が汚いもの、書き方が不完全なものは一律淘汰される。また、新規採用者が長栄集団の文化を受け入れられるかどうかを見極めるため、応募者は専門知識に関するテスト以外に、性格診断および適性検査を受ける。適性検査では、応募者に注意力があるか否か、忍耐力があるか否か、会社の規範や仕事上の種々の要求に応えられるかどうかが見極められる。

 採用後は専門分野において、「あらゆる角度からの教育」が施される。勤務は「陸海交代制」が実施され、地上勤務と航海要員とのコミュニケーションの潤滑化を図る。こうしてまで長栄集団が人材を重視する理由を尋ねると、張氏は「社員は人間の細胞のようなもの。例え細胞一つでも不良が起きてはならない。もしそれが『がん細胞』であればどういうことになる?」と聞き返す。

「カニ」哲学、チームワークの重視

 「いわゆる『長栄精神』とはチャレンジ、イノベーション、チームワークだ」と張氏は語る。その精神は、「上官」から要求される軍隊並に厳格な規律の下に培われる。

 長栄のオフィスは開放的な構造が採用され、仕切りがない。デスクといすは平行に並べられ、明るいライトが備え付けられる。デスクの上に私物はなく、勤務時間をプライベートなことに使う者はいない。禁煙が徹底され、社員全員が清掃に参加する。

 張氏はチームワークを非常に重視しており、多くの足を持つ「カニ」を例に、「すべての足が息を合わせれば、その動作は機敏になるが、1本でもけがをすれば動きは止まる。死に至ることさえある」とその哲学を語る。

 長栄では、社員一人一人が互いに尊重し合い、相手を思いやり、協力して勤務に当たる。なぜなら、みんな共に歩む「カニの足」なのだから。長栄集団が企業管理の理念に「和諧、分享、共栄」(調和、喜びの共有、共に繁栄)を掲げるのは、こうした理由からだ。

ワイズコンサルティング 荘建中

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