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第19回 全国電子総経理 蔡振豪氏(1)


コラム 経営 台湾事情 作成日:2008年1月18日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第19回 全国電子総経理 蔡振豪氏(1)

記事番号:T00005069

 
 1975年創立の全国電子(e-ライフモール)はコンピュータの販売から身を起こし、97年には3C(コンピュータ、通信、家電)チェーンを展開した。しかし「従来型家電販売店」の古いイメージから抜け出せず、00年、流通戦略を進める宏碁(エイサー)グループに株式の30%を売却し、同グループ新事業開発協理の蔡振豪氏が全国電子の事業改革責任者に就任した。

 蔡氏が任務を引き継いだ当初6,000万台湾元(約2億円)だった赤字は、01年には1億6,000万元に膨れ上がったものの、一連の管理改革を経て翌年02年には早くも黒字転換を果たし1億円の利益まで生み出した。不死鳥のごとく復活を果たした全国電子は現在、台湾全土に計287店舗を展開している。舵取り役を引き受けた蔡氏が自ら望んだしたことは一つ、「顧客から求められること」だけだった。老舗の全国電子が生き残りの道を切り開くため「他人ができないこと、しようとしないことをする」というオンリーワンの価値を作り出すことを至上命題とした。

顧客中心のマーケティング

 当時多くの3C販売店が出現して市場の入れ替わりが激しくなり、消費形態や競争環境が変わりつつあると見た蔡氏は、企業は生存の危機に直面しており、ブランドと組織の再編を迫られていると考え、他社との差別化を図り、市場での地位を確立しなければ前途はおぼつかないと判断した。

 そこで蔡氏は、業界で当たり前となっていた「競争相手中心」、「自社中心」の経営路線を捨て、「顧客中心、心をつかむマーケティング」によってサービスを掘り下げ、盲目的に市場競争論理や従来型思考にこれ以上振り回されないという方針を採った。「ほかの人たちが考えたのは、どうやって商品を客の家に押し込むかだった。我々が考えたのは、どうやって顧客の心を我々の店の中にとどめるかということだ」

 蔡氏は、価格の競争力は基本条件の一つに過ぎず、いかにサービスの特色とその価値で顧客の心を揺さぶれるか、これがあって初めてブランドの真の価値が確立できると強く主張する。

従業員は社内の顧客

 ただ、自身は外部からやって来た経営者だったため、最初から万事が順調に進んだわけではなかった。「宏碁は30%の株式を保有している少数株主に過ぎない」ため、内部の反発に遭い、一度は社内クーデターの危機さえあったという。しかし、たとえ改革が困難にぶつかろうとも、蔡氏は一貫して自信を持ち続けた。

 「見方を変える」ことの重要性を理解する蔡氏は、「人には自分とは違う考えを拒絶したり、排除したりする気持ちがあるものだ。私の改革を認められないのが普通の人間で、すぐに受け入れられるのは神様くらいのもの。こう考えて相手の気持ちに立てば、自然と道は開けた」と語る。

 氏は、従業員と株主から支持を取り付けようと、視察に会議、社員とのコミュニケーション、懇談にと休むことなく奔走し、出会う人々に「私は皆さんをマグロを捕りに連れて行きたいんです。海賊に会わせようと言うんじゃないんです」と話した。

 蔡氏はまた、一人の組織改革者として、「よく準備する」ことが最も重要だと考えた。考えをまとめ、はっきりと話し、いかにすればターゲットとする顧客に高い価値の商品を提供できるか、またどうすれば「高価値」の定義を主張できるか、その方法、また有効な伝え方が重要で、当然始めは難しいが、忍耐力を持って徐々に成果を上げれば他人は努力を認めてくれると信じた。

 総経理に就任して3カ月後、蔡氏は大胆にも無記名方式で「施政満足度調査」を実施した。調査結果は、従業員の76%が「満足」と答え、蔡氏の改革が多くの従業員に支持されたことを証明した。

 ある人が蔡氏に「このような方法を採った動機は何か?」と尋ねたところ、蔡氏は「従業員は社内にいる顧客だ。外から来る顧客に対して自社製品の価値を伝えてもらいたければ、まず彼らを納得させなければならない。そうしてこそ初めて私の掲げる『顧客中心、心をつかむサービス』を実行できるのだ」。と答えた。従業員第一、顧客第二、株主第三、これが経営チームの信念であり、従業員の満足度が高ければこそ、完全な顧客サービスが可能になると蔡氏は信じる。

プラスアルファのサービスを

 蔡氏はまず各販売店の店長から手を付けた。店長らに対し、最低100人の顧客の名前を覚えるよう要求し、毎月抜き打ちテストを敢行した。店長たちに、より消費者の需要を理解させ、同社が掲げる「デジタル生活はやさしいお隣さん」のスローガンを実践するため、全店舗に近隣の住民と良好な関係を築くよう求めた。また、各店舗の店員を毎週順番に本社へ呼んで、その週に起きた、サービス上最良の出来事を報告させた。最も内容が良かった者は表彰され奨励金をもらうか、あるいはたすきを掛けてもらい、他の社員たちからの激励を受けた。

 例えば、ある店員はお腹の大きな女性顧客からクーラーの注文を受けたが、1週間経っても2週間経っても連絡がなかった。結局彼女は出産のため病院に入っていたことが分かり、店員はその後、契約通り自宅へクーラーを取り付けに行っただけでなく、「麻油鶏(鶏肉をごま油で炒めた後米酒で煮たスープ。台湾では妊婦が出産後に飲む習慣がある)」を出産祝いとして自腹を切って贈った。また別の店員は、ある老婦人から「スイカをミキサーにかけると中身が溢れてきた」とのクレームがあった際、すぐに新品と交換し、さらに1杯のスイカジュースを買ってきて、その老婦人に渡し、とても喜ばれたという。

 蔡氏は、企業の競争が激しいこの時代、「お客さまのため、プラスアルファの何かをすること」は、単によい接客・心遣いよりも、さらに強い印象を与えることができると考えている。
 

ワイズコンサルティング 荘建中


参考:第20回 全国電子総経理 蔡振豪氏(2)

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