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第17回 金仁宝集団董事長 許勝雄氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2008年1月3日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第17回 金仁宝集団董事長 許勝雄氏

記事番号:T00004728

 
 金宝電子はかつて世界一のコンピューターメーカーだったが、許勝雄董事長の経営拡大方針の下、パソコン、ノートブック型パソコン、携帯電話の受託製造から通信サービス(威宝電信)までを業務領域とする金仁宝集団が創設された。

 近年は液晶テレビの受託製造にも積極的に参入しており、2007年は台湾初となる携帯電話内蔵型公共交通機関用ICカード(悠遊カード)の発売などもあり、売上高は約6,700億台湾元(2兆3,500億円)に上る見通し。08年は8,700億元に達するとも予想される。

 これほど広大な経営規模を持つ企業グループだが、許氏が見ているのは2点のみ、すなわち人と数字だ。

人を基本とし、成果を分け合う

 許氏は、経営者には「人が一切の根本」という心構えが必要であり、従業員が努力に見合った成果を共有できて初めて、組織はその力量を伸ばすことができ、また不利な人材獲得競争において最高の人材を獲得できるのだと考える。

 昔、ある企業家がいた。彼は壁に餅の絵を描き、いつも従業員にこう言っていた。
「君たち頑張れよ、そうすればいつか分け前がもらえるぞ」

 しかし、従業員の多くは退職するまで、「分け前」を受け取ることはなかったという。

 許氏はこの企業家に「掛牆餅(壁に掛けた餅)」というあだ名を付けて言う。
「壁に餅の絵を描いて、うまいことを言うだけ。みんな頑張れ、貢献しろ、そう言いながら分け前は独り占め。ほら吹きのペテン師じゃないか」

 許氏は、「餅」は人の手で管理しておいて、食べごろになれば取り出して切り分けるべきだと語る。
「従業員なら当然だろう?分け前が餅についたごま一粒だけだったとしても、みんな知るんだ、『ごま』はどんな味がするかかということをね」

「細胞分子」経営策略

 「一つのイベントから新たなイベントを生み出し、一つのチームから新たなチームを生み出し、一つの事業部から新たな事業部を生み出し、一つの企業から新たな企業を生み出す」これが許氏の経営理念だ。許氏は「ある種の製品が市場で競争力を得たなら、すぐに第2、第3の主力製品の開発に取りかかるべきだ、そうすれば経営がボトルネックやリスク、市場の変化に直面した時にも対応が可能になる。さらに事業レベルを高め、新しい産業を創造することも可能だ」と指摘する。

 このような「細胞分子」方式によって許氏は、1社のコンピューターメーカーを大小40以上の関係企業を抱えるグループに成長させてきたのだ。

 許氏はまた、経営専門職の育成にもこの方法を採用する。企業の中の事業群が新たな企業として独立すれば、経営を管理する人も倍に増える。例えば董事長は1人から2人へ、副総経理は2人から4人へ、10人の経理は20人へ。管理職全体の数にすると、大きな数が増えることになる。

 そこで、3人の責任者が1組となって業務に当たる人事制度を採用する。すなわち、研究開発、製造、販売部門の責任者が交代で各部門を受け持つことにより、「自分の家の前だけ掃除すれば終わり」といった自己本位的な意識をなくし、それぞれの責任者が他の部門の状況や業務上のプレッシャーを理解することもできる。さらに多種多様な問題の解決方法を学び、成長する機会を得て管理職人員は鍛えられていく。

 新たに事業部を立ち上げた際、新たな出資を行った際、新会社を設立した際、こうして鍛え上げられた管理人員は、新たな配置先でただちに、そして易々と重責を担うことが可能になるのだ。

「数字」を使って有効管理

 許氏は数字に関する記憶力が飛び抜けて優れている。「数字は個人の事物に対する関心、重視、善し悪しの判断の度合いを表し、また管理担当者の責任でもある」と考えている。「もし数字に注意を払わなければ、どのようにして目標と現状の距離を測るのか、どのようにして達成した効果の大きさを測るというのか」と強調する。

 例えば、在庫管理制度に関して、一般企業か銀行では合理的な在庫期間を約60日とするのが一般的だが、許氏は、「一個の製品にかかる設計日数は約3カ月、その製品が実際に利益を生める時間はわずか4カ月、すなわち1カ月以内に出荷できるようにしなければならない」とする「341」理論を提唱する。出荷までの時間は極力短くしてこそ競争力を高められると考えるのだ。現在ノートPC受託製造の仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)では、15日まで在庫期間を短縮し、業務全体の効率を大幅に高めることに成功している。


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