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第20回 全国電子総経理 蔡振豪氏(2)


コラム 経営 台湾事情 作成日:2008年1月25日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第20回 全国電子総経理 蔡振豪氏(2)

記事番号:T00005220

 
 前回、蔡振豪氏が全国電子(e-ライフモール)総経理に就任後、市場での発展にはまず企業体質の改善が先決と考え、積極的に一連の改革を展開したことについて紹介した。蔡氏は「顧客中心、心をつかむマーケティング」の経営方針の下、ついに全国電子を黒字転換に導き、同時に同社を「e-ライフモール」、すなわち「デジタル生活はやさしいお隣さん」のスローガンどおりの良質なサービスを提供する3C(コンピュータ、通信、家電)チェーンへと変身させた。今回はこの「顧客中心、心をつかむマーケティング」手法について紹介したい。

「役」を演じる=模擬販売による学習

 蔡氏は、毎月各地区ごとに「店長大会」を実施した。そこでは各店長から各部門の責任者、蔡総経理まで皆がさまざまな「役」を演じる。

 北部地区の大会では、73人の店長の中から5人を選び、客に扮した上司を相手に模擬販売を行う。頭にスカーフを巻いてエプロンをつけた口うるさいおばさん、安全帽をかぶってビンロウをかみながら、ぞんざいな口調で話す工事現場監督、あるいはつえをついた耳の遠いおじいさんなど、審査員長の蔡総経理自らがさまざまな役に扮する。審査を受ける店長は皆、その場に応じた適切な対応を演じることが要求され、もし言い方を間違えれば、蔡氏が直ちに範を示して訂正する。

 例えば、審査員長扮する電子辞書を買いに来たお客に対し、審査を受ける店長はまず「ご自分で使用されますか、それとも贈り物ですか?」と尋ねる。もし子供へのプレゼントであれば、「お子さんはおいくつですか?」と聞き、入学祝いであれば店長はどんな学校かを尋ね、心のこもった口調で「○○学校、合格おめでとうございます」とお祝いを述べる。とにかく、ただモノを売るだけではなく、顧客の心理を読むことが大切なのだ。このような状況設定と練習を通じて、社員の業務への意欲を高め、学習を通じて余裕を持った対応を自然に身に付けるのだ。

消費者の心を揺さぶる広告「足感心A」

 蔡氏は、消費者が商品を購入するということは、ただ単に「製品」を買うだけでなく、一種の「イメージ」を買うことでもあると考えている。このため、一般的な店でよくある「出血大奉仕!」、「大幅値下げ○割引!」などと大声で叫ぶ販売方法は採らせない。蔡氏自らの発案で、著名な映画監督、呉念真氏を起用し、家庭の温もりを表現した心暖まるテレビコマーシャル・シリーズ、「全国電子、足感心A(感動したなあ~=台湾語)」を放送し、家電を「家庭には欠かせない価値のある道具」に変えた。各家庭まで届けられた物語は見る者に幸福感と感動を与え、その感動は消費者を実際の購買活動に走らせるまでとなった。

 その中の一編では、ある父と娘が登場する。学費を稼ぐため、大晦日も実家に帰らずアルバイトに励む娘が深夜仕事を終えて下宿に帰ると、白髪頭の父親が、1台の洗濯機を買って部屋で娘の帰りを待っていた。洗濯機を2階まで運んだ後、父親は、代金支払いを肩代わりしてもらった際の覚え書きがびっしり書き込まれた紙が壁に貼ってあるのを見かける。悲しそうな表情の父親は、紅包(お年玉を入れる赤い袋)を取り出して娘に握らせて「お年玉だ」と言う。

 娘は驚いて尋ねる。「お父さんの生活も大変なのに、どこにそんなお金が...」。

 父親は問いかけに対し、「全国電子で洗濯機を買ったら、ついでに金を貸してくれたんだ。利子も取らずに」と答える。

 涙を誘う親子の物語のこのシリーズ広告が放映された後、同社の業績は前期比6~7割増加した。

感動広告に見合った新サービスを

 2003年に始まった「全商品12回払い、利息なし」サービスの実施以降、「小型家電の永久無料保証」、「クーラーを1日で配達、取り付け」、「スピーカー永久無料保証」、「最高クラスのクーラー取り付け」と、「足感心A」シリーズに合わせたキャンペーンを次々に打ち出した。 蔡氏は、「新しいサービスの主眼は顧客の問題解決にあり、他の人ができないことをしてこそ価値のあるサービスと言える」と語る。しっかりとした教育・訓練を行い、言ったことは必ず実行し、消費者の予想よりもさらに良いサービスを行って初めて大きな成果を生むことができるというポリシーだ。

 例えば「最高クラスのクーラー取り付けサービス」では、取り付け係が顧客の家に上がる際は、床に汚れが付くことを防ぐ靴カバーを装着し、クーラーの取り付け前には家具にもカバーをかけ、誇りが付着するのを防ぐ。また、取り付ける過程を写真に撮り、会社に持ち帰ってクーラーが適正かつ確実に取り付けられたかどうかを確認する。さらにアフターサービスとして顧客に電話で満足度調査を行い、調査の結果次第で取り付け係に奨励金を出して激励する。これらをセットとして一連のサービスの管理を行っている。

 実際のところ、クーラーの取り付けはすべてアウトソーシングで実施している。しかし、担当者にどうやればいいかを教えるだけでなく、確実に実行できるよう支援しつつ彼らを送り出す。もしうまくできなければ、もう一度訓練を施し、それでもできなければ契約を打ち切る。 

 一方で顧客満足度で最高の評価を受けた取り付け係には100万元を超えるボーナスを出す。訓練、試験、奨励、懲罰、一つとして欠けてよいものはない。素晴らしい広告を打っても実行できなければ逆効果となるからだ。
 

ワイズコンサルティング 荘建中


参考:第19回 全国電子総経理 蔡振豪氏(1)

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