記事番号:T00130245
■頼もしい助っ人
業務フローの迷宮で立ち往生するメンバーたちを見て、李経理が長島総経理の許可を得て呼び寄せたのは、取引先であるパソコン販売会社の若きエンジニアだ。父親が経営する会社を手伝っているというその好青年は、すでに管理部の面々とも顔馴染みで、礼儀正しさと丁寧な言葉遣いが印象的だった。
彼はホワイトボードに描き説明をする。マンツーマンで指導する彼の周りには、瞬く間に質問攻めにするメンバーの輪ができた。この「助っ人」の投入により、停滞していた空気は一気に動き出す。
■想像力という壁
1週間遅れではあったが、李の機転によりようやく「現状」の業務フローがすべて描き上がった。しかし、本当の戦いはここから先の「見直し」だ。
長島は妻の言葉を反芻していた。「現状を描くのはヒアリングすればできます。難しいのはその先よ。実際の仕事がどう動くべきかを描くには『想像力』と『発想力』が必要なの」
どうすれば今より良くなるのか。デジタル化した後の世界を想像し、新しい形を発想する。難易度は格段に上がるが、長島が出した結論は彼らしく単純明快だった。「とにかく前に進むだけだ。壁に当たれば、その時に考えればいい」。それが長島高貴という男だ。
■道案内
意気揚々と「業務フローの見直し」に乗り出したメンバーたちだったが、その初動は散々なものだった。
例えばメンバーのコウは会計課長のもとへ相談に向かった。「課長、この3種類の小口費用申請を1つにまとめたいのですが、どうすればいいと思いますか?」「…わからん」課長は素っ気なかった。「では、こちらの押印申請の場合は?」
課長「私に何をして欲しいんだ?」
にべもない態度に憤慨し会議室へ戻ったコウは「非協力的だ!」と息を巻いた。他のメンバーも同調しかけたその時、李が優しく芯のある声で語り始めた。
「皆さん、少し考えてみましょう。デジタル化とは、ある種のイメージの世界です。課長には複数の申請書が1つになるイメージが湧かないだけなのです」。
李はメンバーの目を見渡した。「私たちは道案内の先導役です。私たちはその先に何があるかを知っています。どうすれば課長を導けますか?」
沈黙の後、モエが口を開いた。「地図を見せてあげます『あそこまで行けばコンビニがありますよ』って教えます」
メイも続く。「いくつかのプランを示します。『近道だけど険しいルート』と『遠回りだけど景色のいいルート』、課長に選択してもらいます」
コウ「私が間違っていました。次は『どうすればいいですか?』ではなくて、具体的な選択肢を持って提案に行きます」全員が深く頷いた。
李はそれ以上、何も言う必要はなかった。失敗から本質を学び取った彼らに、確かな成長の兆しを見たからだ。

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宇都宮武則
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