記事番号:T00130272
皆様、こんにちは。経営者の「思考時間」をサポートするワイズ独自調査コラムです。
前回は、平均入場者数が1万人を突破し、コロナ禍以降に歴史的な飛躍を遂げた台湾プロ野球(CPBL)の「総合エンタメ経済圏」について解説しました。今回はその続編として、台湾の球団が仕掛ける「常識破りなテーマデー(主題日)」に焦点を当てます。
台湾のローカルカルチャーや消費者インサイトを鋭く突いた独自のプロモーション戦略は、現地市場を攻略する上で非常に多くのヒントを含んでいます。
夏の猛暑をテーマパーク化「涼水祭」
亜熱帯である台湾の過酷な夏の猛暑を逆手に取った、中信ブラザーズ(中信兄弟)の超名物企画「涼水祭(スプラッシュ・ウォーターフェス)」です。外野席や応援ステージから放水銃で大量の水が客席にばらまかれ、ファンも水鉄砲やレインコートを持参して「ずぶ濡れになりながら応援する」という、まさにテーマパークさながらのイベントとして定着しています。
水着姿のチアリーダーによるパフォーマンスも相まって、真夏の開催にもかかわらずチケットは即完売。悪条件(猛暑)を「非日常のエンタメ体験」へと変換する、見事な逆転のマーケティングと言えます。
台湾信仰のエンタメ融合「神様コラボ」
台湾に深く根付くローカル信仰・文化である「廟(お寺)」と野球をミックスさせた規格外のイベントです。試合前のグラウンドを神輿(みこし)や伝統的な神様の着ぐるみが練り歩き、来場者にはおみくじや「お清めの水」が配られます。
台南を本拠地とする統一ライオンズ(統一獅)の「廟宇季」などが有名ですが、老若男女問わず親しまれる台湾ならではの土着カルチャーとスポーツを融合させることで、熱狂的な盛り上がりを見せるとともに、地元コミュニティとの強固な結びつきを生み出しています。
ペットフレンドリー「ペット同伴デー」
深刻な少子化とそれに伴う爆発的なペットブームという社会トレンドを捉え、味全ドラゴンズ(味全龍)や富邦ガーディアンズ(富邦悍將)をはじめ、いまやほぼ全球団が「ペット同伴デー」を開催しています。
単なる外野の芝生エリアにとどまらず、中信ブラザーズなどのように内野席にペット専用エリアを設け、飼い主のすぐ隣の座席にそのまま愛犬・愛猫を座らせて一緒に観戦できる球団もあります。
ペットフードメーカーやペット保険企業がこぞってスポンサーにつき、球団側もワンちゃん・ネコちゃん用の小さな「球団特製ユニフォーム」や関連グッズを販売。ペットを「家族」として扱う層の消費意欲をダイレクトに刺激し、莫大な収益を上げています。
国軍との本格コラボで魅せる「阿迷趴」
楽天モンキーズ(樂天桃猿)の代名詞とも言える、ミリタリー(軍隊)をテーマにした大人気イベント、「アミーパーティー」です。本企画は選手やチアリーダーが迷彩柄の特別ユニフォームを着用するだけでなく、台湾の国防部と本格的にコラボレーションしているのが最大の特徴です。
台湾の「軍人節(9月3日)」のタイミングにリンクさせて開催されるのが恒例となっており、今年2026年も9月2日~3日に第14回「アーミーパーティー」の開催が予定されています。ファンと球団、そして国軍が一体となるこのイベントは、単なるスポーツ興行を超えた圧倒的な非日常空間を創り出しております。熱狂する現地の空気感を味わうためにも、ぜひ一度球場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
図1 楽天モンキーズのアミーパーティー
経営へのヒント:台湾特有のインサイトを「エンタメ化」する柔軟性
これら4つのヒット企画に共通しているのは、単なる思いつきではなく、「台湾特有の気候・文化・社会トレンド・消費者心理」を深く理解し、それを思い切ったエンターテインメントに昇華させている点です。
日系企業が台湾でマーケティングを展開する際、日本の成功モデルをそのまま持ち込むだけでは熱狂は生み出せません。現地の文脈(お寺の文化やペットへの愛情、国を挙げてのイベントなど)に寄り添い、時には「球場でずぶ濡れになる」ような柔軟で大胆な体験設計を取り入れることが、台湾消費者の心を動かす強力な武器となります。
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