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第33回 中台関係の緊張続く、ECFAって何?/台湾


ニュース 社会 作成日:2024年1月22日_記事番号:T00113379

ワイズニュースこぼれ話

第33回 中台関係の緊張続く、ECFAって何?/台湾

 13日の総統選挙で民進党の頼清徳・副総統が当選しました。「一つの中国」原則を認めない民進党政権の3期続投が決まり、中国の経済的、政治的、軍事的圧力やフェイクニュース(偽情報)、認知戦が続くと予想されています。

関税優遇撤廃で圧力

 経済的圧力に関しては、中国は選挙前の1月1日から両岸(中台)間の海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)のアーリーハーベスト(特定品目の早期関税引き下げ措置、EH)で、石油化学製品12品目に対するゼロ関税を取り消しました。中国は、ECFAは1992年の共通認識(92共識、92コンセンサス。「一つの中国」原則で中台が合意したとされる)を基礎としていると強調し、他の品目のゼロ関税も取り消すと示唆しました。

 ECFA(エクファ)とは、中台間の自由貿易協定(FTA)に相当します。国民党の馬英九政権(2期、2008~16年)で、10年6月に調印しました。ECFAではまず11年1月から台湾の製品539品目(農産物18品目含む)、中国の製品267品目に対する関税優遇措置を開始し、13年に対象品目がゼロ関税となりました。

ECFA調印、中台の経済交流新時代に 2010年6月30日

https://www.ys-consulting.com.tw/news/23705.html

 ゼロ関税が取り消されたとしても、中国も台湾も世界貿易機関(WTO)に加盟しているので、最恵国待遇の関税率が適用されます。中国輸出ができなくなるわけではありません。

ヒマワリ学生運動のきっかけ

 ECFAでは続いて13年6月に、サービス貿易協定に調印しましたが、水面下で内容が決められたと与野党から批判の声が起こり、台湾の立法院(国会)で条文を1条ずつ審査し、承認するまで発効しないことになりました。審議が長引く中、14年3月18日、当時与党だった国民党が立法院会議(院会、本会議に相当)前の委員会審議の通過を一方的に宣言しました。これをきっかけに、同日夜、審議のやり直しを求める学生など市民数百人が立法院を占拠する「ヒマワリ学生運動」が発生しました。

中国80・台湾64項目で市場開放、サービス貿易協定に調印 2013年6月24日

https://www.ys-consulting.com.tw/news/44367.html

学生が立法院占拠、中台サービス協定強行に抗議 2014年3月19日

https://www.ys-consulting.com.tw/news/49255.html

対話再開の見通し立たず

 急速な対中接近に対する懸念は拭えず、16年の総統選挙で、民進党の蔡英文政権(2期、16~24年)が誕生しました。ECFAのサービス貿易協定は棚上げになり、ECFAの物品貿易協定や紛争解決制度などの交渉もストップしました。

 蔡政権は日米関係強化や東南アジアとの貿易拡大などで中国依存を引き下げてきました。米中対立で中国以外への生産移転が進んだこともあり、対中輸出比率は過去21年で最低の35.2%まで下がりました。それでも3分の1を占めます。

23年対中輸出、過去最低 2024年1月10日

https://www.ys-consulting.com.tw/news/113175.html

 蔡総統路線を引き継ぐ頼次期総統も中国に対話を呼び掛けていますが、中国は「一つの中国」原則を体現する92コンセンサスが前提条件と返答しています。

青木樹理

青木樹理

ワイズメディア

日本、台湾での金融機関勤務を経て、ワイズニュース創刊年の2007年に入社。副編集長を経て20年より編集長。台湾経済・産業の動向を分かりやすくお伝えするため、台湾社会をウオッチしながら生活しています。

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