記事番号:T00128426
皆様、こんにちは。経営者の「思考時間」をサポートするワイズ独自調査コラムです。第5回は少し視点を上げ、台湾経済の全体像に迫ります。
台湾の成長と衰退は、単なる市場原理だけでは語れません。国内外の政治や地政学リスクと連動し、国策として産業構造が塗り替えられてきました。台湾経済を動かす「5つの転換期」を紐解きましょう。
第1期:1960年代~「輸出加工区」の誕生と軽工業(労働集約型)
輸入代替から「輸出主導」へ大きく舵を切った時代です。1966年に世界初とも言われる「高雄加工出口区(EPZ)」が誕生。繊維や家電組み立てなどの労働集約型・軽工業が主力となり、港湾を持つ【高雄】周辺に労働者が大量流入しました。台湾南部が一大産業拠点へと発展する原動力となったのです。
第2期:1970年代~「十大建設」と重化学工業への脱皮(資本集約型)
オイルショックや国連脱退という国難を乗り越えるため、政府主導で巨大インフラ整備と重工業化を推進したのが「十大建設」です。鉄鋼や石油化学などの資本集約型産業が育成されると同時に、高速道路や港湾・国際空港が整備されました。台湾西側の主要都市を繋ぐ大動脈が完成し、現在の物理的な骨格が出来上がりました。
第3期:1980年代~「サイエンスパーク」の設立とIT立国へ(技術集約型)
労働コストの上昇を見据え、国家戦略を「ハイテク産業」の育成へ全振りした転換期です。1980年に「新竹科学園区(サイエンスパーク)」が設立、1987年にはTSMCが誕生しました。半導体や電子部品が新たな主力となり、【新竹】は台湾経済の新たな心臓部として覚醒。富と人材を生み出す最強のエコシステムが証明されました。
第4期:1990年代~2000年代「中国シフトとOEMの覇権」
台湾企業が安い労働力と市場を求めて一斉に中国へ工場を移転した時代です。鴻海(Foxconn)などのEMS(受託生産)が世界を席巻し、大量生産体制を構築しました。国内製造業の「空洞化」が懸念された反面、【台北】を中心とする北部が「本社・R&D機能」へ特化し、サービス業や金融業の高度化が促進されました。
第5期:2018年~現在「サプライチェーンの国内回帰と先端技術特化」
米中対立等の地政学リスクにより中国依存のサプライチェーンが限界を迎え、政府の優遇策により莫大な資金と工場が台湾へ「Uターン」しています。主力は先端半導体やAIサーバーです。新竹の用地飽和に伴い、TSMC等ハイテク企業が【台中】【台南】【高雄】へ次々に巨大拠点を新設し、中南部で地価高騰や消費ブームを引き起こしています。

経営へのヒント:次なる波に乗るための「見取り図」
台湾経済の歴史は、地政学という「抗えない外部環境」を、国策によって「新たな成長エンジン」へ転換し続けてきた歴史でもあります。
現在、私たちは第5期の「国内回帰・先端技術特化」の渦中にいます。経営者の皆様においては、自社の事業がこの大きな歴史的潮流のどこに位置しているのかを再定義することが重要です。
単なる「製造拠点」や「市場」としてではなく、地政学リスクを織り込んだグローバルサプライチェーンの「戦略的要衝」として台湾拠点を捉え直す視点こそが、次なる10年の成長を左右する鍵となるでしょう。
次回からの連載では、この歴史的転換の最前線に切り込みます。「主要都市発展シリーズ」では重工業等で栄えた都市がIT・サービス業の街へ脱皮する姿を、「サイエンスパークシリーズ」では新竹の成功体験を台南や高雄が猛スピードでアップデートする現状を紐解きます。
事業戦略の羅針盤として、次回からの連載にぜひご期待ください。
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