コラム

記事番号:T00067140
2016年10月28日15:44

 第2回は弊社創業者である吉本康志に大きな影響を与えたタナベ経営創業者、田辺昇一氏(昨年12月に93歳で死去)について語ってもらいました。(聞き手・ワイズコンサルティング 陳逸如)

陳:わが社では毎年日本人経営者向けに「ワイズ経営塾」というセミナーを開催しています。経営を教える立場の社長に、経営を教えてくれた師匠はいるのですか?

吉本:最も影響を受けたのは以前勤めていたタナベ経営の田辺昇一社長です。駐在員時代、田辺社長が台湾に来た時はいつも、寝る時間以外はほとんど付きっきりでした。ある時、田辺社長から「他の社員は私の近くに来ないのに、吉本くんなぜずっと私のそばにいるの?」と聞かれました。その時、私は「普通の経営者が社長とお話するには、相談料として1時間50万から100万円を払わなくてはなりません。でも社長のアテンドをしていれば社長の話を無料で聞けます」と答えました。田辺社長からは「志が違うのですね」と言われました。

「経営は1T3M」

陳:経営者について教わったことは何でしょうか?

吉本:田辺社長はいつも講演の際に「経営は1T3M」と言っていました。Tはテクノロジー、三つのMのうち最初の一つはマーケットです。テクノロジーにマーケットをうまく結び付ければ、ビジネスが成り立ちます。これを「事業センス」と呼ぶそうです。その後会社を発展させるためには二つ目のM、マネジメントが必要です。商売は1回ごとですが、経営は継続的なものです。会社を運営してくには制度、仕組み、戦略が必要になってきます。それがマネジメントです。最後のMはマネーです。実はつい最近まで理解できなかったのですが、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を読んで、ここでいうマネーの本当の意味が分かりました(いまさらですけど(;^_^A)

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 3Mの中のマネーは最初から必要ではないかとずっと思っていましたが、それは違いました。ここでいうマネーはお金ではなく、投資のことなのです。商売は物による売買でしょう?それにマネジメントを加えれば少し経営っぽくなりますが、まだ商売の世界です。経営とは投資によるリターンのことで、どれだけ投資してそこからどれだけ利益を生みだしたかという話です。

陳:他に今のワイズの経営に使っているものはないですか?

吉本:田辺社長の著書で『経営の赤信号』という本があります。今でも覚えているのは、本の中に社員に「?」のマークを渡すという不思議な絵があったことです。その絵の意味は「社員に疑問を持たせるな」です。ですから今のワイズでは、社員に疑問を持たせないように会社の経営状況を業績先行管理表、会社の現金残高、会社の損益など全てリアルタイムで公開しています。(私も交際費を自由に使えない仕組みです(T_T))

伸ばす会社と伸びる会社がある

 田辺社長から、世の中には「伸ばす会社と伸びる会社」があると教わりました。その話を聞いたとき「なるほど…」と思いました。伸ばす会社とは社員に高いノルマを課して無理矢理に伸ばしていく会社のことです。伸びる会社は、お客さまのニーズに支えられ自然と伸びていく会社です。わが社はもちろん後者を目指しています。だからワイズは営業担当者にノルマを持たせず、売上目標はあるけれども、達成しなくても社員にその責任を追及したりしません。経営目標が達成できるかできないかは経営者の責任で、そのプレッシャーを社員に分担させるべきではないと考えているためです。

 あと、こんなこともありました!当時29歳の吉本くんは田辺社長にちょっと意地悪してみました(*^3^*)。「この人、知識の人かな?知恵の人かな?」と試したくなったのです。田辺社長に「社長、よく海外に行かれますが、海外に行ったらどこを見ますか?」と聞いてみました。社長は「トラックの荷台を見る」と即答しました。「何故ですか?」と尋ねると「荷台を見ることでその国の産業が分かる」と答えられました。う~ん、この人は本物だなと思い感服しました。m(_ _)m

なんともならないのが経営だ

陳:まだ他にありますか?

吉本:たくさん教わりましたが中でも印象的なのは「なんともならないのが経営だ」という言葉です。多くの経営者は「なんとかなるさっ」と思って意思決定をしてしまうけれども、そのような意思決定をしてはならないという意味です。この言葉がなければ、おそらくワイズは何度もつぶれていました。例えば会社が小さかったとき、優秀で給料の高い人材に出会い、いったんは採用したいと考えました。しかしその時、田辺社長の言葉を思い出して採用を我慢して、後になって振り返ると結局採用しなくてよかった、と思うようなことは多々あります。ワイズを経営してきた20年間、意思決定をする前はいつもこの言葉を思い出していました。

/date/2016/10/28/20wise2_2.jpg08年、第5期経営塾の授業風景(16年11月25日に第20期が開催されます)

陳:経営者としてではなく、コンサルタントとして教わったことはありませんか?

吉本:それもたくさんあります。一番印象に残っているのは「コンサルタントはしょせん芸者商売ですよ」という言葉です。コンサルタントも芸者と同じで、指名されなければいくら優秀でも意味がない、お客さまを喜ばせてなんぼの世界だということです。

陳:でも、コンサルタントはお客さまに耳に痛いことも言わないとならないのでは?

吉本:それはそのとおりで、お客さまの嫌がることを言ったとしても、最終的にお客さまのためになるのであれば、喜ばれるのではないでしょうか?

一流に接しよう

陳:ワイズは社員は身だしなみを厳しく要求していますが、それはなぜですか?

吉本:実はこれも田辺社長の影響です。田辺社長はよく「一流に接しよう」とおっしゃっていました。はやりの服、おしゃれな服を着る必要はありませんが、小綺麗な服を着なさいという意味です。

陳:だから社長はいつも超~高いスーツを買っているのですね(ーー;)

吉本:コンサルタントがボロボロな服を着てお客さまに接すると、お客さまはこの人は自分と違う世界の人だと感じて、依頼しにくくなるでしょう?

陳:ワイズは20年間業績を伸ばし続け、赤字を経験したことがありません。成功した経営者といえるのではないですか?

吉本:ハハハ…、成功したとは全く思っていません。むしろ発展途上だと思っています。わがグループは将来アジアのマッキンゼーになりたい。アジアから日本に再上陸というのは昔から言っています。でも、その前にマイルストーンが必要です。

 日本が再び世界ナンバーワンの経済大国になるために貢献したい。そのためには、日本企業がアジアで活躍できるようなインフラを整備したい。第1ステップとして、日本人が一番経営しやすい台湾で、日本企業が活躍できるようにお手伝いしたい。それができたら、一つマイルストーンを達成したともいえるでしょう。さらには、ワイズとお付き合いいただいた駐在員経営者の皆さまから本社社長を何人か生み出せれば、同じくマイルストーンを一つクリアーできると思っています。

陳:最後に、社長にとって経営とは? 

吉本:芸術だと考えています。若いころは経営は「管理」とだ思っていました。起業してから気づいたのですが、私の尊敬している加藤社長(次回の登場人物)や河原会長ら成功している経営者を観察していると、厳しく管理しているわけではない。しかし会社は毎年成長しています。再び経営とはなんぞやの迷宮に迷い込みましたが、最終的にたどり着いた結論は「芸術」です。経営はクリエイティブな芸術のようです。

 経営は自分で創り上げることができますが、ハーバード大学の名誉教授だからといって名経営者になれるわけではありません。ちょうどピアノ学科の教授がプロのピアニストになれるわけでないのと同じで、正しくできるように教えるのが教授で、人を感動させられるのがプロです。優秀な経営者たちの作り上げたビジネスモデルは本当に美しいのです。でもビジネスモデルをイメージできる感性がないと理解できないのです。

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吉本康志

吉本康志

Executive Consultant

日本の大手コンサルティングファームの駐在員として台湾駐在、1996年11月にワイズコンサルティングを設立。経営者としてコンサルタントとして男としてもまだまだ成長中。