記事番号:T00067246
いよいよ最終回です。今回は吉本がアップルの創業者、スティーブ・ジョブズから学んだことをご紹介します(聞き手・ワイズコンサルティング 陳逸如)
陳:ワイズでは社員に支給するパソコンやスマートフォンは全てアップル製品です。なぜ社長はアップル以外は使わないのでしょうか?
吉本:アップル製品を好むのは3つの理由があります。1つ目は斬新なコンセプト。2つ目は使う人の立場になって考え抜いた操作性。そして3つ目はデザインがおしゃれだからです。例えば、昔私が使っていた初代パワーブックは後部に「足」があり、キーボードに傾斜を付けられるようになっていました。机の上では傾斜を付けた方が文字を打ちやすく、使う側の立場に立ったデザインでした。
陳:確かにそうですね。アップル製品はおしゃれですし、いつもお客様に格好いいとほめてもらっています(*^_^*)。製品だけでなく、経営においてもスティーブ・ジョブズからかなりの影響を受けているようですね?
吉本:まず、ワイズを立ち上げた直後の1997年当時、アップルの経営はどん底の状態でした。その頃、あまり仕事がなかったので、もしアップルのコンサルティングを引き受けたとしたら、どうやって立て直すかをいつも考えていました。当時、必死に考えましたが、出した答えは「自社による再建不能」でした。
その後、追放されたジョブズがアップルに戻って来ました。けれどもジョブズがやったことは、アップルに残されていたわずかな希望の光を一つずつ消していくことでした。
破壊の天才?
陳:ジョブズは何をしたのですか?
吉本:アップル社が20周年記念で作ったマッキントッシュを見て、「なんだこのガラクタは!?」と言って窓から放り投げたのです。そして、優秀な社員をどんどんクビにしました。量販店での販売をやめたり、サードパーティへのOSのライセンス販売も中断したりしました。私は「ジョブズは以前自分を追放したアップルに復讐するために帰って来たのだ」と思いました。(ちなみに当時、アップルはこれで終わりだと考え、ワイズ最初で最後のウィンドウズPCを1台買いました。アップルを裏切ってごめんなさい(#_#))。
ジョブズはさらに、競合のマイクソフトに増資をしてもらいました。それを見て「ジョブズはやはり会社を潰しに帰ってきたのだ」と確信しました。絶望的な状況でした。
しかしその後、ジョブズは斬新な手法でアップルを救いました。それが初代iMacでした。これを知った瞬間、私は「ジョブズは天才だ」と感動しました(T_T)。なぜかというとPCの常識をいっぺんに覆したからです。それまでオフィスで使われるPCは黒かグレーの色ばかりで、目立たないことが前提でした。しかし、ジョブズはインテリアになるようなおしゃれなパソコンを創りました。ビジネスユース市場だったPCで、ジョブズはいきなりホームユースというブルーオーシャンを創造したわけです(ちなみに、当時はまだブルーオーシャンという言葉はなかった。ジョブズ恐るべし!)。
1998年5月に発売された初代iMacです。アップル信者である吉本はもちろん購入しました
当時のPC市場は、モニターの大きさ、中央処理装置(CPU)の速さ、ハードディスクの容量の大きさが競争要件でした。ハードディスクはウィンドウズPCでは既に10GBを超えていたのに、アップルは4GBしかありません。当時アップルは最新のものを購入する資金はなかったと思います。しかし、その不利をホームユースにすることによって全て有利に変えました。例えば、ホームユースだから、ハードディスクが大きくなくても問題ありません。
それだけではなく、業界初の試みにもいくつか取り組みました。その1つが、CDプレイヤーとステレオスピーカーの標準装備です。それまではPCで音楽を聴くことは面倒でしたが、一挙に手軽になりました。USB端子を標準装備にした一方、データの受け渡しに必須だったフロッピーディスクドライブを外しました。それ以外にも筐体を透明にするなど、とにかく、世間を驚かせる工夫がたくさんありました。
陳:iMacの話になると止まりませんね。そろそろカットしてもいいですか(= =;)?
吉本:あと5時間くらい語れますけど(^◇^)。じゃあ、最後に、iMacが一番美しいのはどこでしょう?「後ろから見た姿」なのです。オフィスで使うなら、パーテーションがあるので、デザインにこだわる必要はないですが、家で使うから後ろから見たデザインを美しくしたわけですぅ~。
まとめると、iMacはお金がない中、アップルを復活させるために考えたプロダクトです。ジョブズはブルーオーシャンを創り、弱みを強みに変えたのです。
陳:確かにすごいですね。
ビジネスデザインの天才
吉本:まだあります!03年のiPodの誕生は、私たちユーザーの音楽の聴き方を変えてくれました。音楽をネットで買えるようにしたのです。今世界で一番音楽を売っているのはiTunesです。それらを見て私は「ジョブズはプロダクトをデザインする天才であり、ビジネスもデザインする天才」であることに気が付きました。その時、私は加藤社長(第3回の登場人物)と河原会長(吉本が師匠と思っている方)の会社がうまくいった理由が初めて分かりました。それは「ビジネスデザイン」です。ジョブズの経営を見ていて、経営は芸術だと悟ったのです。
現在のワイズオフィスです。おしゃれなMacに負けないスタイリッシュさで、台湾テレビドラマのロケでも使われました
独裁者こそ成功しやすい?
陳:スティーブ・ジョブズは多くの人に独裁者と言われていますが、社長もそう思いますか?
吉本:はい、独裁者だと思います。
陳:一般的に独裁者はうまくいかないと聞きますが?
吉本:皆が理解でき、賛成できることは競合も思い付くでしょうし、画期的なものではありません。経営は芸術なわけですから、万人に理解される方がおかしいのです。多数決では推し進められないのです。だから、ワイズニュースを始める時、当時の社員からは理解を得られませんでしたが、最終的には独裁的に決めました。後になって社員に「当時は社長の言っているビジネスモデルがイメージできなかった」と言われました。
独裁は危険だけれども、不利な状況を突破するには必要なのです。
陳:ジョブズはあまり人材を大事にしないイメージがあります。この点に関して社長と真逆のように思いますが、どうでしょうか?
吉本:私もジョブズの下で働きたくありません(笑)。鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)さんはジョブズに似てますよね。強引なところも似ているし、自分が欲しいと思った人材は必ず口説き落とせる、欲しい事業も必ず手に入れる人です。おそらく、自分のモチベーションについて来れない社員は要らないんじゃないかと思います。でも、逆にその高いモチベーションがアップルや鴻海の成功の秘訣かもしれません。
陳:社長の中で人材は重要ですよね?ちょっと不安になったので、一応確認まで(汗)
吉本:状況が異なります。うちはマッキンゼーやボストンコンサルティンググループではないので、優秀な人がどんどん入ってくる状態ではありません。また、日本語でサービスしているので、日本語が必須です。若い時にレストランの店長を務めて得た経験ですが、人が多い方が良いサービスができますが、経験のない人が十数人いるよりも、経験豊富な人が5人いた方が良いサービスができます。
今のワイズメンバーです
ですから、社員を使い捨てにするよりも、スキルを高めて、長く働いてもらった方がメリットが大きいと思うのです。というのも、私はジョブズや郭台銘さんみたいに人を引き付ける魔力もないので、なるべくスキルを身に付けながら、皆が長く働けるような会社にしたいと思っています。
一番の成功
陳:では社長、今回の特集で最後の質問になります。20年の年月を費やして今のワイズを創り上げた社長にとって、この20年間で一番の成功は何だったのでしょうか?
吉本:3つ言ってもいい?\(//▽\\)/
陳:一番の成功を伺っているのですが…
吉本:いいから、3つ言わせて~(^0^)
1.台湾企業向けのコンサルティングを3年間で見切りを付けたこと
2.労務顧問会員サービスのビジネスモデルを思い付いたこと
3.今のメンバーを集めたこと(ふふ♥)
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吉本康志
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