コラム

記事番号:T00067165
2016年11月1日16:13

 第3回は、弊社にとって初めての日系のクライアント様だったU社、その社長の加藤氏について吉本に語ってもらいました。(聞き手・ワイズコンサルティング 陳逸如)

陳:私が2005年に入社した当時、社長から加藤社長のお話をたびたび伺いました。加藤社長とはどのような人物だったのですか?

吉本:00~02年当時、わが社最大のクライアント企業だったU社の社長です。加藤社長はおそらく、台湾で起業した日本人の中で、成功している経営者ベスト3に入るでしょう。U社は総合商社で今はアジア全体に拠点を持ち、350人を超える社員を抱えています。

陳:ワイズにとって大事なクライアント様だったのですね。その加藤社長からどのようなことを教わったのでしょうか?

吉本:加藤社長に出会うまでは、社員を一生懸命働かせることが経営だと思っていました。しかし、U社を見ていると、社員が一生懸命働くのと、会社が成長するのとは全く別物であることに気付きました。それこそが最も学んだことでしょう。

 加藤社長の会社の社員は労働時間が短く、出勤日数も少なく、もちろん残業する社員も少ない。でも会社はぐんぐん成長している。今まで私が信じてきたことが根底から覆され、会社を発展させる原動力は一体何だろうと考えるようになりました。

ビジネスモデルが最重要

陳:鍵は何なのか、分かりましたか?

吉本:経営者が構築するビジネスモデルです。ビジネスモデルが素晴らしければ社員が楽をしていても会社は成長します。経営者が優秀であれば社員は楽ができるということが分かりました。

陳:企業の発展に最も大切なのはビジネスモデルということですね。

吉本:社員の努力も必要ですが、経営者も努力しなければ会社は成長しないということです。

 加藤社長に総合商社の成功の秘訣(ひけつ)は一言で言うと何ですか?と尋ねると「商材の開発力」と答えられました。加藤社長は他の人と同じものを見ても、同じことを聞いても、他の人が気付かないところにビジネスチャンスを発見できます。

陳:その理由は何でしょうか?

吉本:加藤社長の事業センスです。常に経営のことを考えているので、他の人には気付かないビジネスチャンスに気が付くのです。ただ、たまに時代を先読みし過ぎることもありましたけどね(笑)。例えば、当時インバータの技術に目を付けたのですが、費用が高いのでどこのメーカーも導入してくれませんでした。それでも、今のエアコンはほとんどがインバータになっているでしょう?。

 さらに一つ、大切なことに気が付かされました。「商売と経営の違い」です。01年、台湾にもITバブル崩壊の影響がやって来て、下半期から電子部品の受注が激減し、加藤社長の会社も大きな影響を受け、わが社の仕事も激減しました。

 その時思ったのが、商売と経営は違うということです。売り上げを1社に依存せず、常に案件が入ってくるような方法を構築しないと駄目で、さもないと毎回受注の度に一喜一憂することになる。小さな案件でもいいから、継続的に受注できるような仕組みを構築しなければならないと気付かされました。

クライアントに育てられる

吉本:私が師匠と思っている経営者は2人で、1人はU社の加藤社長で、もう1人はT社の河原会長です。お2人にはいくつか共通点があります。1つ目は、コンサルタントとして私を雇ってくれ、お金を頂きながら経営を学ばせてくれたことです。しかも、コンサルタントとして育ててくれたのです。

/date/2016/11/01/20ys_2.jpg今日のワイズコンサルティングは、加藤社長らの教えを土台に成長してきました

陳:それはどういうことでしょうか?

吉本:私を信じて、経験したことのない新しいコンサルティングにチャレンジさせてくれたという意味です。経営診断、労務診断、新製品開発プロジェクト、売上向上プロジェクト、人事制度作成プロジェクトなどはお2人の経営者に機会を頂いて開発したサービスです。本当にありがたいお話です。私はクライアントの皆さまに育てられて今があるのだと実感しました。ワイズが現在いろんなコンサルティングができるのは、過去にこのようなクライアント様がいたからです(感謝T_T)。

 もう一つの共通点は、お二人とも持ち家を持ったのは60歳を過ぎてからです。それまでは、お金があれば会社に投資していました。

若くして成功しない方がよい

陳:私が初めて加藤社長にお会いしたのは11年前の自分の誕生日の日でした。林森北路のとあるスナックで社長に誕生日を祝ってもらったら、たまたま加藤社長もそのお店にいらっしゃいました。当時既に70歳近くの加藤社長がとても元気で、びっくりしました。

吉本:ハハハ…そのときのことをまだ覚えているのですね。加藤社長は昼間厳しい顔していますが、夜は優しい顔をしています。よく食事もご一緒させていただき、本当にありがたいです。う~ん、加藤社長に一番教わったのは夜の世界の楽しみ方かもしれません(笑)

 加藤社長には何度も「どうしたら社長のような成功者になれるのですか?」と尋ねました。加藤社長からは「若いうちに成功するとろくなことはない。10年間は信用を売りなさい。その後の10年は信用が食べさせてくれる」と言われました。「20代で成功すると30代でつまずく、30代で成功すると40代でつまずくが、50代で成功するともうつまずかない」とも教えられました。でも私は「ええ~10年も待てないよ。今すぐにお金持ちになりたいのだ!」と心の中で思っていました。「若いときは、お金の使い道がたくさんある。若い君に毎月100万円収入があっても、残りますか?50歳を過ぎて成功するとお金の使い道がなくなるのでお金が残るのだよ」と解説してくれました。また、今振り返ってみると、もうけようとして始めたビジネスはほぼ全滅し、今わが社に残っているのは信用を売るために始めたビジネスばかりです。

社長は給料をたくさんもらえ

吉本:加藤社長には「社長はたくさん給与をもらえ」とも教わりました。まあ、当時のわが社ではもらいたくてもお金はなかったけどね…(;^_^A

陳:以前、別の会社の会長からも同じ話を聞いたことありますが、それはなぜでしょうか?

吉本:会社にキャッシュが足りなくなったとき、自分で補填(ほてん)できる経済力を持つ必要があるということです。

 以前、田辺社長にちょっと意地悪をしたことがあるという話をしましたよね。実は加藤社長にも意地悪したことがあるのです(^◇^)。経営塾のケーススタディを加藤社長に出して、解いてもらったのですが、なんと百発百中でした(◎_◎)。「なぜ分かるのですか?」と尋ねたら、「経験したから分かる」とおっしゃいました。確かに、松下幸之助も経営を勉強したことはなかったけれども経営の神様と呼ばれました。その時私は「経営学とは、経営を学んだことのない人が短期間で経営を学ぶための学問なのだ」と思いました。既に経営をしている人は実際に経験しているので、感覚で分かってしまうのです。

陳:ワイズ社内でも次の経営者となる人材を育てていますが、社長からみて、経営者になるのに必要なのは何でしょうか?今の話だと、やはり経験でしょうか?

吉本:うん…人が見えないものを見るスキルかな。

陳:それはどうしたら身に付きますか?

常に深く考えること

吉本:常に考えること、そして深く考えることです。日常で常に深く考えていると、他人には見えない「これだ!」ということが思い付くわけです。

陳:さきほどの加藤社長の商材開発の話もそういうことでしたね。

吉本:その通り。あと、景気が何とかしてくれる、社員が何とかしてくれるなどと一切考えないこと。経営者は常に深く考えていることが大事なのです。

陳:社長は自ら会社を立ち上げ、ビジネスモデルもゼロから考え、今のワイズを創り上げました。社長の一存で経営の意思決定ができるためスピードが速い。駐在で来られている経営者の皆さまとは少し立場が違うように思いますが、社長からみて、やはり創業社長の方がやりやすいのでしょうか?

吉本:確かにビジネスはやりやすいかもしれません。だけど、社長は定年退職ができるけど、経営者に定年はない。私が今一番欲しいのは定年退職です(^0^;)。

 経営者は経営者でなければ積めない経験があるので、長くやる方が効果的です。台湾で成功した経営者の代表、台塑集団(台湾プラスチックグループ)の王永慶さん、統一企業集団(ユニ・プレジデント)の高清愿さん、長栄集団海運(エバーグリーン・グループ)の張栄発さん、みんな若いときから経営に従事しています。

 駐在で来られている経営者の皆さまは、若くして経営者のポジションを任されることはとても幸運だと思います。ただ、駐在で経営者になったばかりの方は、いくら本を読んでも、MBAを勉強しても、1~2年で経営ができるようになるのは難しいです。私は、経営学と経営の実践をどう結び付けるかを常に考えてきました。そして、ついに一度に両方を学べるメソッドを開発しました。それが「ワイズ経営塾」です(*^^*)。

 ゴルフも同じでしょう?ゴルフの本をいっぱい読んでもうまくなれない、コースをいっぱい回るだけでもプロになれないのと同じで、両方必要なのです。

陳:最後に、社長にとって創業からの20年間はどのような時間でしたか?

吉本:欲と希望と挫折まみれのあっという間の歳月でした。

 ダルビッシュが一軍半の選手だったとき、4回で6失点した試合がありました。その時ダルビッシュは「今までの20年はあっという間だったので、これからの20年もきっとあっという間に過ぎるだろう」と思い、40歳になった自分を深くイメージしたそうです。このまま一軍半の選手のまま40歳になれば、仕事もなくなり、人生を後悔しそうです。そう考えたとき、神様が降りてきて、「一度だけ君を20歳に戻してあげる」と言いました。20歳に戻ったダルビッシュはやりたいことがたくさんある、やらなくてはいけないこともたくさんあると思い必死になったそうです。

 私はサラリーマンをしているときにダルビッシュと同じ感覚を持っていました。仕事柄お付き合いする皆さまが50~60代の方ばかりなので、常に自分も同様の年齢と思い込んでいました。誕生日を迎えるたびに自分の若さに驚き、後悔しないように常にベストを尽くしてきました。ですから本当にあっという間の20年だったのですよ。

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吉本康志

吉本康志

Executive Consultant

日本の大手コンサルティングファームの駐在員として台湾駐在、1996年11月にワイズコンサルティングを設立。経営者としてコンサルタントとして男としてもまだまだ成長中。