記事番号:T00002659
●前回までのあらすじ
長らく赤字が続いていた日系企業の台湾M社は、中西総経理の赴任2年目となる昨年、ついに黒字転換を果たした。しかし仕入先P社の価格値上げや、伸び頭である代理店G社のボリュームディスカウント要求が原因で利益は伸び悩んでいた。中西総経理はP社とG社を調査してみると、両社とも不審な会社であった。次に興信所を使ってみたが、実態は分からず中西総経理は苦境に陥っていたのだった…
●新たな依頼先
もはや仕入れ先P社および代理店G社が不審なのは確定的であったが、取引構造や証拠をつかまないまま取引を停止をすると、今度はどんな報復が待ち受けているか分からない。
また、今まで台湾サプライヤーをまとめてくれていたP社との取引がなくなると、短期的には台湾M社のビジネスに大きな痛手を被るし、取扱量が急増し、販売量の一番多い代理店であるG社と取引を停止しても、同様に台湾M社の痛手となることは明らかである。
台湾M社のNo.2である荘副総経理に相談してみると、「実は前任の総経理もP社とG社には不審を感じていましたが、しょせんサラリーマンですので、見て見ぬ振りをしていました。台湾には日本人が知らない方が良いこともたくさんあるのですよ」と、暗に「手を引いた方が良い」と提案された。
たしかに荘副総経理の意見も一理あるが、中西総経理は台湾M社の社員たちが努力した成果を見知らぬ者たちに吸い取られることは許せなかった。
そこで最近セミナーに参加して名刺交換をしたコンサルタントを訪問し、相談してみることにした。
「う~ん、そうですね~ わが社では度々クライアントの競合他社の情報を入手する必要があります。ですから、その辺の実績はおっしゃる通り結構豊富にあります。ただし、それは経営戦略やマーケティング戦略立案というプロジェクトの一環で行っているもので、探偵事務所ではないですから…」と断られてしまった。
しかし中西氏はあきらめずに、「困っている経営者を手伝うのがコンサルタントの仕事なのではないでしょうか?それにわが社のケースも言い換えれば『利益増加のコンサルティング』になるのではないでしょうか?」と引き下がらなかった。
コンサルタントは「確かにおっしゃる通りですね。もう少し詳しく聞かせて下さい」と、後日企画案の提出を約束した。
●調査実施
後日、コンサルタントが提出した企画書では、幾つかの方法を試しながらP社とG社の実態を探る案を提案してきた。
作戦の詳細はご紹介できないが複数の作戦を試しながら実情を探っていくという方法である。
リサーチの見積りは安くないものの、台湾M社の利益増加分を考えると、合理的な金額であったので、中西総経理は早速依頼することにした。
…1カ月後、報告書完成の連絡を受けて中西総経理はコンサルタント会社を訪問した。
コンサルタントは深刻な表情で、「意外な事実が判明しました…」と報告を始めた…
④につづく
※本コラムは事実を基にしていますが、複数の事例を交えてストーリーを展開していますので、個人及び団体が特定できないようにしています。
ワイズコンサルティング 吉本康志