記事番号:T00002291
●黒字転換
日系企業の台湾M社は過去6年にわたり、赤字が続いていた…
しかし昨年、長年続いた赤字状態を脱出し、わずかではあるものの単年度黒字に転換することができた。
総経理着任3年目である中西氏は、「過去2年の努力が実ってきている。今期こそは大幅な黒字を実現し、累損を一掃しよう」と意気込んでいた。
●利益流出
今年度に入り半年がたったが、売り上げは予定どおり順調に伸びていた。
しかし利益は思ったほど伸びず、原因を探ってみると、P社からの仕入れコストが上がっていたことと、数年前から代理店に加わったG社の販売増加によるボリュームディスカウントが増加していることが分かった。(図参照)
このままでは売上が増加しても儲かるのはP社とG社ばかりで、台湾M社にはほとんど利益をもたらさないことになってしまう。
●調査実施
そこで中西総経理はP社とG社を訪問し、取引条件の見直しを行うことにした。
P社とM社にアポイントを取って訪問してみると、P社は思ったより小さな会社であることが分かった。
いや、小さいというよりほとんど実態の無いいような会社だったのだ。
P社の総経理は歓迎してくれたが、小さなオフィスに通訳兼秘書兼会計の小姐と総経理の二人しかいないのである。
しかも、P社の総経理は台湾M社に販売している製品の内容にも疎かったので、中西総経理は取引条件については切り出さずに、取りあえずこの場を引き取ることにした。
続けて訪問したG社も同じ状況だったので、中西総経理は「不正取引」を疑い始めていた。
●脅し
その日、中西総経理が家に帰ろうと社用車に乗っていると、人通りの無い道で黒塗りのベンツが追い越し、社用車の前で急ブレーキを掛けた。
バタン、バタン!
中から体格の良い男が2人下りてきて、ドアを空けろと言ってきた。
中西総経理は「ドアを開けたら大変なことになる」と思い、運転手に鍵を掛け、絶対空けないよう指示した。
男たちは中西総経理たちの乗っている車のドアを蹴飛ばしながら、しきりに「開けろ!」と叫んでいる。
仕方がないので中西総経理の運転手はドアに鍵をかけたまま、ウィンドウを少し下げて「何事ですか?」と恐る恐る尋ねた。
(その2)につづく
※本コラムは事実を基にしていますが、複数の事例を交えてストーリーを展開していますので、個人及び団体が特定できないようにしています。