コラム

記事番号:T00008171
2008年6月17日0:00
 
●コンサルタントとしての起業

 最近知り合いの方からたびたび、「日本へ帰任命令が出たので、吉本さんのようにコンサルタントとして起業したいのですが…」という類いの相談を受けます。

 それに対し私は「台湾で大失敗して日本に帰れないのなら別ですが、そうでないのなら日本に帰った方がいい」と提案します。

 それは「競合が増える」ことを警戒しているのではなく、心から「同じ日本人として、異国の地で失敗するのはもう見たくない」と思うからです。

 駐在員からコンサルタントを目指す方の多くは、

 1.台湾のことは知っている
 2.業界のことは知っている
 3.中小企業診断士の資格を持っている
 4.無料でコンサルティングしている

 などを起業の理由に挙げます。

 「台湾のことは知っている」という方には、「ネットが一般的になり、情報が無料で手に入る時代に、台湾通というだけの情報にわざわざお金を払いますか?」、「あなたは他人が入手できない特殊な情報を入手するルートやノウハウがあるのですか?」と尋ねてみます。

 「業界のことは知っている」という方には、「同じ業界で働く人達の知らない情報なのですか?」、「あなたの属する業界の人たちがお金を出しても欲しい情報なのですか?」と尋ねます。

 「中小企業診断士の資格を持っている」、「今でも無料でコンサルティングしている」という方には、「お金を払ってでも依頼してくれる人を、どう見つけるのですか?」「ビジネスとしてコンサルティングするのなら、ノウハウ構築能力が必要ですが、新しいノウハウをどう創るのですか?」と尋ねています。

 いじわるな質問でしょうが、この程度の質問に答えられなければコンサルタントとしてビジネスが成り立つわけがありません。


●寿司屋で寿司を食べたことがありますか?

 しかもそれ以前の問題として「コンサルタントを使ったことがありますか?」という問い掛けに対し、ほとんどの方は「使ったことはない」という回答です。

 「ある」と答えた人でもその多くが「セミナーに参加したことがある」とか「会計士にコンサルティングしてもらっている」という類いの経験です。

 「セミナー」は広告活動ですので、ほとんど収入にはなりませんし、ブランド力が無い個人が初めても、これだけでは食べてゆけません。

 「会計士」は「公認会計士」という公的資格があるので、会計の相談についてはお金を貰えますが、資格のない人が相談しても会計士のようにはお金を頂けません。

 「会計士」のビジネスと、「コンサルタント」のビジネスは、相談されるところは似ていますが、全く別世界のビジネスなのです。

 公的資格を持っていないコンサルタントが、資格を持っている会計士ほど楽にはビジネスはできるわけがありません。


 つまり、これらの状況は「寿司屋で寿司を食べたことはないけれど、寿司屋をやる」と言っているのと同じものです。 


 ふつう寿司屋をやりたければ寿司屋で数年間は修行をするように、コンサルタントをやりたければ、コンサルティングファームでの修行が必要です。 (アングラなコンサルタントを目指すなら別ですが…)

 しかも、コンサルティングファームで優秀であったコンサルタント達が独立しても、ほとんどうまくゆかない業界なのです。

 寿司屋で例えると、寿司を握れるからといって、寿司屋が成功するとは限らないのと同じですね。

 なぜ自分の精通している業界ではなく、見たこともない商売に自分の人生を賭けるのでしょうか?

 私が12年前に起業した当時から、台湾でコンサルタントとして独立した知り合いは数十人に上りますが、10年間続いている人は誰もいません。

 私が起業する前からやっている人たちで、今でも続いているところもありますが 、みなやっと食べていける程度で成長しているところはありません。

 「寿司屋で寿司を食べたことがないのに、寿司屋ができない」ことぐらい、小学生でも分かりそうものですが…



 今日もまた、知り合いのコンサルタントが廃業しました…


●起業への格言⑦

「知らない業界では起業しない」


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