ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00107547

＜登場人物＞

ワイズシステム副総経理　宇都宮武則

本コラムの筆者です。

台湾Ｓ電工　山田新一総経理

1978年千葉県生まれ、上場企業Ｓ電工の営業企画課長から2018年に総経理として台湾赴任。

前回までのお話

https://www.ys-consulting.com.tw/column/l/2189/

　2年後（2025年３月）。

　山田総経理が居酒屋「ふじこ」ののれんをくぐると、いつもの一番奥の席から宇都宮が手を振りました。二人が出会ったこの場所で2年ぶりの再会です。

　山田総経理がテーブルに着くと女将（おかみ）さんが、いつもの穏やかな笑顔でやってきてました。

女将：お久しぶりですわ、いつもの生ビールでよろしいかしら。

　山田総経理は女将さんが赤ちゃんをおぶっているのに気付きました。

山田：女将さんのお子さんですか？

女将：そうですの、3カ月になります。

山田：たまご型の輪郭と切れ長の目は女将さん似ですね。

女将：みなさんそうおっしゃいます。パパに似て鼻が大きいのが玉にキズです。

　カウンター越しに大将がこちらを振り向くと3人はクスクス笑いました。

本社の属人化解消

山田：その節は突然の帰任でろくに挨拶もできず大変失礼しました。

　山田総経理はテーブルに両手をつくと深々と頭を下げました。

宇都宮：いやいや、本当に驚きましたよ。金曜日の夜に「ぼく帰任です！」ってチャットが来たと思ったら月曜日には飛行機の中だったんですから。

山田：ぼくも突然であたふたしました。月曜日に空港から本社へ直行したら、社長直々に辞令をいただきました。

辞令「台湾支社総経理の任を解き経営企画部次長、兼労働生産性向上プロジェクトITチームリーダーを命ずる」

宇都宮：チャットで知る限り、日本でもご活躍のようですね。

山田：おかげさまで台湾でのkintone（キントーン）導入のノウハウがすごく生かせています。

宇都宮：山田総経理の努力の結晶ですからね。

山田：改めて思ったのは、kintoneは業務の種類に依存せずにIT化が進められる便利なプラットホームだということです。本社での課題の一つは、オフィス業務の大半はパソコンで資料や書類を作成し、データを加工する定型業務ですが、資料やデータが属人化していて個人のPCやフォルダに収められている点です。

宇都宮：6年前の御社もそうでしたね。

山田：別の課題は、国内に40余りある本支店間の社内メールでのやりとりです。例えば「岡山支店　支店長　岡田様　　神田支店営業課の中村です。この度は北斗産業の東京支店長をご紹介頂きまして誠にありがとうございました。さて本題ですが…」

宇都宮：社内でも普通そうなりますね。

山田：このようなかしこまった長々としたやりとりも、kintoneの営業案件管理アプリを使って案件ごとにチャットすることで要件だけを簡潔に伝えられるようになりました。とても好評です。

　生ビールと地鶏の焼き鳥盛り合わせが運ばれてきました。

山田：え？まだつまみ頼んでないよ。

女将：大将からですわ。

　山田総経理と宇都宮は大将の方を振り向くと軽く会釈をしました。山田総経理は改めて店内を見回しました。

山田：店の雰囲気、変わらないなー。この店ごとうちの会社の近くに来てほしい、毎日通っちゃうね。

本支店間の顧客情報共有

宇都宮：本支店間をまたぐ業務でもkintoneは重宝しているようですね？

山田：そうなんです。支店には本社基幹系の販売管理システムには登録されない見込み顧客データが各社員のPCに散在していました。受注などで取引が始まると初めて販売管理システムへ受注までの経緯とともに手入力されるわけです。

宇都宮：それは手間ですね。

山田：そこで取引前の顧客情報をkintoneで一元管理するようにしました。もちろん取引が決まると販売管理システムへは自動的に情報を取り込みます。

宇都宮：メリットが大きそうですね。

　山田総経理は生ビールを一気に半分飲むと大きく息を吐いて。

山田：kintoneの顧客情報を活用し始めています。これまでは同じ得意先で神田支店とは取引があっても岡山支店は知るすべがありませんでした。顧客情報が縦割りだったわけです。それがkintoneで企業名を調べれば支店ごとの取引状況が一括で分かるようになりました。他の支店で取引実績があれば交渉も参入もしやすいのです。

宇都宮：なるほどですね。

山田：この2年間で40余りの本支店の3分の2まで導入が進みました。それと若手メンバーの提案でRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）も導入したんですよ。これがまたkintoneとの相性がバッチリでしてね。定型業務の自動化が見る見るうちに進みました。

宇都宮：それでどのくらいの生産性向上の成果が見られましたか？

山田：kintone導入前に比べて業務プロセスが半分になりました。

宇都宮：おお、素晴らしい。成功談の裏には相当な苦労もあったのでしょうね。

山田：そうなんです、そこを察してくれるのは宇都宮さんだけなんですよね～。

　閉店まで二人の話は続きました。そして二人は店を出ると、次の再会を誓って固く握手を交わしました。雲ひとつない空には三日月が笑っているように見えました。（完）

なじみの居酒屋「ふじこ」

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