記事番号:T00129345
皆様、こんにちは。経営者の「思考時間」をサポートするワイズ独自調査コラムです。前回は台湾全土の工業区の全体像をお届けしました。今回からはいよいよ個別エリアの深掘りに入ります。そのトップバッターは、台湾ハイテク産業の絶対的な「頭脳」であり、世界経済の心臓部とも言える「新竹(シンチク)」エリアです。
現在、この新竹では『現在進行形の日系企業のシフト』と『数年後を見据えた巨大な都市開発』という、ビジネス地図を塗り替える2つのメガトレンドが同時進行しています。
日系企業の重心移動「台北から新竹の技術中枢へ」
これまで日系企業の多くは、利便性から台湾法人本社を「台北」に置くのがセオリーでした。しかし近年、AIチップ需要の爆発により、日系企業の重心は猛烈な勢いで新竹へと移っています。 最大の理由は、半導体サプライチェーンの「圧倒的な在地化(ローカライゼーション)」です。顧客と膝を突き合わせ、即日で次世代技術を共同開発するための「テクニカルセンター」を新竹の現場に持つことが絶対条件となりました。
飽和状態の「新竹科学園区(竹科)」を囲むように、周辺エリアへの波及効果が生まれています。例えば、竹北に位置する民間開発の「台元科技園区」には、IC設計やソフトウェア開発のスタートアップ、外資系テック企業が多数入居し、新たなハブを形成しています。

同時に日系企業の動きも加速しており、東京エレクトロン(TEL)が竹東に巨大なトレーニングセンターを設立し、SCREENなどの装置メーカーもR&D機能を現地へ移植しました。さらに、富士フイルムが湖口の「新竹産業区」への投資を拡大するなど、新竹は日系企業にとって「モノを売る場所」から「技術支援・開発の最前線」へと変貌しています。
2027年、高鉄駅前に誕生する「第二の頭脳ハブ」
もう一つの巨大なうねりが、「高鉄新竹駅前(竹北エリア)」の超大型再開発です。ここには今後、竹科のスペース不足を避けた「IC設計トップ企業」や「外資系テクノロジー企業」が大規模に入居します。象徴的なプロジェクトが以下の2つです。
1.メディアテック(聯発科技)の新竹高鉄オフィスビル
約90億元を投じ、約3,000名のトップエンジニアが入居する巨大R&Dビル(2027年完工予定)。
2.未来之心 Gateway Plaza
大手デベロッパーが手がける大型複合開発で、北棟(26階)が2027年、南棟(40階)が2029年に開業予定です。こちらには、竹科のスペース不足や交通渋滞を避けたい外資系テクノロジー企業、ITサービス、金融機関の地域本部などが入居すると見られています。
これにより、高鉄駅前は製造・ハードウェア中心の竹科とは異なる「頭脳と設計に特化した都市型の新クラスター」として確立されます。さらに、メディアテックの新ビルは駅裏の「新竹生物医学園区」と空中回廊で直結する計画であり、「AI・半導体設計×スマート医療・バイオ」の異業種イノベーションが誘発されることが確実視されています。
新竹クラスターにおける「2つの戦い方」
1.「超・近接支援ハブ」の構築
単なる営業所にとどまらず、R&D・技術サポート・人材育成を一体化させた拠点を新竹の各園区周辺(竹北、竹東、湖口など)に構え、顧客の要求スピードに100%同期する体制を作ることが第一歩です。
2.高鉄駅前の「新エコシステム」へのB2B/B2Cアプローチ
駅前の巨大オフィスビル群はグリーンビルディングとして設計されており、日系企業が持つスマートビル技術、省エネ設備、セキュリティなどの「ESG関連ソリューション」に巨大なB2B需要が生まれます。同時に、数千人規模のトップエンジニア層が流入するため、ハイエンドな飲食店やリラクゼーション、高級スーパーといった「高品質なB2Cサービス」の進出余地も爆発的に広がっています。
「技術開発の最前線」と「新たな都市型クラスターの誕生」。この2つの波を的確に捉えることが、次なる台湾ビジネスを制する鍵となります。
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