記事番号:T00125309
川湖科技(キング・スライド・ワークス)は世界2位のスライドレールメーカーです。主な製品は、サーバーや周辺機器のほか、キッチンで使われています。自社ブランド「キング・スライド」があります。
サーバー用スライドレールの顧客は、IBM、HP、デルなどの有名企業です。
2024年の売上高は101億2000万台湾元、粗利益率は69.12%、1株当たり利益(EPS)は64.59元でした。
■家具用スライドレールで起業
創業者で董事長の林聡吉氏は、もともと木工職人で、1986年に川湖科技を設立しました。当時は、高雄市路竹の工業区にある家族経営の会社で、洋服ダンスや引き出しなど家具のスライドレールを設計・製造していました。
1960年代、台湾の家具産業は半自動化で生産され、スチール家具が流行しました。川湖科技をはじめ、多くの家具メーカーは、スチール家具メーカーに事業転換しました。
■値下げ拒否で顧客失う
2001年、競合他社が3割値下げして顧客を奪おうとしたため、最大の顧客が川湖科技にも3割の値下げを要求しました。林氏が値下げを断固拒否した結果、大口顧客の受注を失いました。同年の売上高は44%減少し、核となる幹部4割が離職しました。
林氏はあきらめず、新たな技術を開発し、家具用スライドレールからサーバー用スライドレールへの参入を果たしました。
川湖科技は、自社ブランド「キング・スライド」を立ち上げ、完全な受託生産メーカーから脱却しました。ちょうどそのころ、コンパック(2002年にHPが吸収合併)のサーバーレールのサプライヤーに問題が発生したため、川湖科技に対しサンプルを求めてきました。キング・スライドのスライドレールはコンパックから認証を受け、翌年から大量出荷を開始しました。
その後、IBM、HP、サン・マイクロシステムズなど大手メーカーの受注にも成功し、家具用スライドレールで失った穴を埋める主力製品となりました。
■労力より頭脳で勝負
スライドレールの特許は高度な技術が必要で、新規性が求められます。林氏は自ら技術開発に携わり、「労力ではなく、頭脳で勝負」という理念を掲げ、販売量や規模の拡大だけでなく、設計や製造、研究開発(R&D)など技術面を重視しました。
ユーザー中心設計(UCD)の製品や設計を追求し、「何を作るか」ではなく、「ユーザーは何が欲しいのか」に発想を転換しました。低価格競争を拒み、品質を守りました。
林氏は、高い参入障壁を持つ製品にこだわりました。顧客にとって他社に乗り換えるコストが高く、他の製品に代替されにくくなります。
研究開発には、売上高の5%、社員の25%を投入し、技術力と特許を蓄積しました。川湖科技の特許は、世界各地で3000件を超えます。
■AIサーバーを支える
川湖科技は、サーバー用スライドレールを中心に据えつつ、特定市場に依存せず、リスクを分散するため、高級キッチン用のスライドレール市場にも進出しました。高級キッチン用スライドレールの生産能力を拡大するため、新型コロナウイルス流行時に、高雄市に自動化工場を設置しました。創業以来、最大の投資規模です。
AI(人工知能)時代の到来で、サーバー数百台が高速演算を行うようになりました。川湖科技製のスライドレールは、目立たないものの、安定、安全で、こうしたサーバーのメンテナンスで重要な役割を果たしています。
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