記事番号:T00070874
本コラム執筆の目的
ゴルフはリカバリーショットが大切だと言われますが、経営も同様です。
経営者としてリスクに備えるのは当然ですが、どれだけ備えていても想定外の危機は訪れるものです。
本コラムでは私自身が自社で経験した失敗とそれをどう克服してきたのかを紹介し、少しでも皆さまの経営のご参考になれれば幸いです。
●2009年の状況
オフィス・住居にかかわらず、台湾でよく言われているのは「一度空き巣が入ったところには何度も入る」ということです。
クライアント様からも度々同様の経験をお伺いしていましたし、社員も増えて手狭になってきたこともあり、引っ越しを考え始めていました。
過去の経験からオフィスの賃料は月間粗利益額の10%以上なら負担が重く、7%未満なら負担にならないことが分かっていました。
当時は年平均40%で売上が成長していましたが、リーマンショック後まだ半年でしたので、今後は不透明な状況です。
また当時はひと月に20回ほどセミナーや研修をしていましたので、セミナールームが付属していれば月間20万台湾元までの賃料なら負担できそうです。
当時管理部長だった荘(現・高級顧問)に「できれば15万元以下、高くても20万元以下の賃料でオフィスを探してほしい」と依頼しました。
荘はしばらくの間、昼間はセミナー講師、夜はオフィス探しに奮闘してくれました。
数週間たったある日、荘は自信満々に「いい物件がありました。社長も絶対気に入りますd(^_^o」と報告してきました。
早速見に行ってみると、ビルは多少古いもののオフィスは内装をしたばかりで、イタリアンレストランのような真っ白のレンガの壁で囲まれています。
しかもセミナールーム付きで、社員の席数は21席と当時15人だった社員には充分な広さです。
他に会議室が2つあり、しかも賃料は12万元と格安なのです。
「こんな、わが社にピッタリのオフィスなんてあり得るのだろうか?」とちょっと不安を覚えました…。
●悪魔のオフィス
即、大家さんと契約をして引っ越ししました。一番喜んでくれたのはクライアントの皆さま、次が社員でした。
立派なオフィスに引っ越ししたので安心したせいか、このころから社員の帰社時間が午後8時を過ぎることは少なくなりました。
また、社員の休日出勤が減り、代休や有給休暇を取得するようになりました。
しばらくして、社員から「座ると体調が悪くなる席がある」との噂を聞きました。
そんな訳ないと、若くて元気がいい人が座っても半日で体調不良になります。
そのうち私は原因不明の体調不良で1カ月半ほど出社できない日々が続きました。
当時は苦楽を共にした以心伝心の幹部が多かったので、幸いにも業務への影響は少なく済みました。
その後、社員も交代で健康に支障を来すようになり、手術に至った人も複数出てきました。
過去には少なかった離職も頻繁になり、敏感な社員が「霊の通り道になっている」と言って一日で辞めることもありました。
以前のオフィスにいたメンバーは相互補完体制ができており、多少の離職があっても問題ないようになっていましたが、次から次へと健康や家庭の問題で辞めてゆきます。
引っ越しして1年で営業担当者は全員離職し、営業部門は崩壊してしまいました。
ある日、入り口で大家さんと会ったときに「お宅は大丈夫?」と尋ねられました。
大家さんいわく「このオフィスに入った企業は半年以内に倒産するか、すぐに引っ越ししてしまう」というのです。
長年苦楽を共にした幹部たちも辞めなければならなくなり、社員の3分の2が離職し、新人を採用してもすぐに辞めてしまう状態が続きました。
2010年度の成長率は創業以来初の1桁成長となってしまいましたが、売上より失った人材に心が引き裂かれる思いでした。
引っ越しを何度も検討しましたが、売上が伸びず、社員が増えない状況では現在以上の物件は考えられず、結局6年間も「悪魔のオフィス」から抜け出せませんでした。
オフィスを決める時に荘からの「占い師にみてもらいましょう」との助言を聞かずに即決したことを後悔していました…Orz
●不可能な任務
営業部門が崩壊し、新人も居着かなかったころ、当時20代前半で総務と会計をしていた佐々木(現・董事兼経理)に「営業をやってほしい」と頼みました。
当時の佐々木は努力家ではありましたが、社会経験も少なく、人前でとても話ができそうもない普通の女の子でした。
泣きそうな顔をして「一晩考えさせて下さい」と言ってトイレに走っていった姿を今でも鮮明に覚えています。
無理を承知でお願いしたのですが、当時は私、荘、陳の3人のコンサルタント以外でわが社のビジネスを理解しているのは彼女しか残っていなかったのです。
次の日「やってみます…」と自信のない返事をもらい、それから他の新人と一緒に営業の特訓が始まりました。
営業の新人は入れても入れても辞めてゆきますが、佐々木は必死に食らいついてきていました。
結局、当時私が営業を教えた社員は佐々木しか残りませんでしたが、彼女は一人で営業を頑張ってくれました。
●リカバリーの結果
私や周りも、たぶん本人も気付いていなかったのが、彼女は営業の才能があったということです。
最初は「こんな女の子がワイズの営業?」と不審に思ったお客さまからも、彼女の熱意と努力により、最終的には「さすがワイズの営業だ」と高い評価を頂けるようになりました。
その後、佐々木は一人で営業部門を守り続け、年上の後輩を育てながら営業部門を立て直し、アシスタントマネジャー(副理)に昇格しました。
現在、佐々木は更なる成長のために営業部門から外れ、会員サービス部門のマネジャー(経理)を任せています。
こちらでも活躍は続き、佐々木のセミナーが終わった後、お客さまから「佐々木さんは御社のスターですね。輝いていましたよ」と言われるのが私の自慢です(;^_^A
●今回の格言
人の可能性は無限大
【6月27日開催】
「2017年 在台日系企業給与セミナー」
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/70313.html
今年は特に「労働基準法改正」の影響が考えられます。果たして在台日系企業の給与への反映はどうなっているのでしょうか。
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seminar@ys-consulting.com
吉本康志
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