経営のリカバリーショット 第8打 会社存続危機


コラム 経営 2017年5月25日

台湾経営マニュアル 経営のリカバリーショット

経営のリカバリーショット 第8打 会社存続危機

記事番号:T00070768

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本コラム執筆の目的

 ゴルフはリカバリーショットが大切だと言われますが、経営も同様です。

 経営者としてリスクに備えるのは当然ですが、どれだけ備えていても想定外の危機は訪れるものです。

 本コラムでは私自身が自社で経験した失敗と、それをどう克服してきたのかを紹介しており、少しでも皆さまの経営のご参考になれれば幸いです。

 

●2008年の状況

 今回は新規事業のワイズニュースがやっと軌道に乗り始めて一息ついていたころに起こった、会社存続を揺るがす事件をご紹介します。

 

●秘密の部屋

 当時は台北市忠孝東路と延吉街の交差点近くで、50坪のアパートをオフィスとして利用していました。

 入り口はアパートなので怪しげですが、室内は内装デザインをしている友人(第2話で登場)が格安で設計と施工をしてくれた小ぎれいなオフィスでした。

 オフィスをデザインする際に友人から「吉本君はたびたび徹夜しているから、董事長室の奥に秘密の扉(ノブはなく外からは扉と分からない)と、その奥にプライベートルームを付けておいたよ」と言われました。

 引っ越し前のオフィスでは、ほとんどソファーの上で身体を縮めて寝ていたので、とてもありがたいアイデアでした。

 このオフィスに来てからは、秘密のプライベートルームが生活空間となり、家族が台湾にいたころひと月に一度は、頑張っている自分へのご褒美として、普段は家内の実家に住まわせてもらっている家族と、ここでだんらんする生活をしていました。

 

●ブラック企業?

 当時のわが社の1日は長く、編集部員と、当時管理部だった陳(現在は協理)は朝7時までに出勤し、夜は早い人で9時、多くは午前0時以降に退勤していました。

 忙しくて昼食抜きのことが多く、食べられる場合でもハンバーガーなどをまとめて買い、仕事しながら食べる状態でした。土日も数人はオフィスに出ており、有給休暇は病気以外は取得できません。

 給料はたくさん出したかったのですが、経済的な理由から本当に安い給料しか出せませんでした。それでもみんな一生懸命働いてくれていました。

 今考えると、社員の自己犠牲でようやく成り立っていた会社でした。それでも辞める人も少なく、みんながお互いのことをよく知っていて、家族のような関係でした。

 今で言えばブラック企業なのでしょうが、起業して数年はそんなことを言っていては会社が持ちません。

 今の日本ではブラック企業という言葉が市民権を得ていますが、上場企業ならともかく、起業して間もない企業や零細企業はブラックにならざるを得ない場合があります。米国のベンチャーキャピタルも、社員が土日に出社しない企業には投資しないと聞いています。

 現在のわが社はブラックを卒業できました。でも、最初からブラック企業がダメならば、新たな企業が生まれるチャンスはなくなるかもしれません。日本の将来が心配になります。

 

●ある夜の出来事

 ワイズニュース副編集長の青木が入社半年後、それまで使っていたデスクトップパソコンを全てノートパソコンに入れ替えました。

 その数日後のある夜のこと、お客さまの接待を終え、午前1時にプライベートルームに戻り仕事をしていました。

 午前2時ごろ、オフィスで物音が聞こえましたが「社員の誰かが戻ってきて仕事をしているな」ぐらいに思ってました。

 ところがやがて董事長室のガラス扉の鍵を開けようとする音がします。社員は董事長室には入って来ないのでおかしいと思い、プライベートルームの扉を開けました。

 ガラス越しに見て、「コピー機のメンテナンスか」と思いましたが、夜中の2時に作業員がいる訳はありません。

 急いで秘密の部屋に戻り、お客さまから頂いたモデルのライフル銃を持ち出し、大声で「シャオトウ(泥棒の意味)」と叫びました。

 男数人が玄関から逃げていきましたが、董事長室の鍵が壊されており、外に出られません。

 すぐに通報したものの、警察が来てくれたのは30分もたったころ。現場検証もせず事情を聴かれただけでした。

 被害は買ったばかりのノートパソコン7台です。案の定、犯人は逮捕されませんでした。

 

●不幸中の幸い

 不幸中の幸いだったのは3点です。

1.犯人が董事長室の扉を開けていれば私の命が危なかった

2.董事長室にあった金庫は無事だった

3.私を含む幹部クラスはパソコンを持ち帰っていたので、クライアント企業の情報漏えいはなかった

 飲食業が食中毒を起こすと存続の危機になるように、情報産業にとって情報漏えいは致命的です。

 パソコン代は痛かったですが、情報漏えいにならなかったのはラッキーでした。

 

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◯即行った対応策

1.セコムの導入

2.退勤時、パソコンは机の引き出しの中に入れ鍵を掛ける

3.ネットワーク、パソコンのセキュリティーを強化する

4.銀行届け出印はオフィスに置かない

5.社内の金庫になるべく現金を置かない

 

◯数年かけて行った対応策

1.情報セキュリティの国際品質システム(ISO27001)の導入

2.ISO27001の主任審査員資格を取得

3.パソコンの紛失対策(iPhoneの機能同様、所在場所が分かり遠隔操作でデータを削除できる)

 

●リカバリーの結果

 家族同然の社員が故意に情報漏えいするとは思えませんが、ミスや紛失で漏えいする可能性はあります。

 また、社員数が増えるに従いリスクは増すため、常に安心はできませんでした。

 ISO27001の導入で毎年第三者が監査し、セキュリティーレベルが上がるため、やっと安心して寝られるようになりました。

 

●今回の格言

 不幸があるから強くなれる

 

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吉本康志

吉本康志

Executive Consultant

日本の大手コンサルティングファームの駐在員として台湾駐在、1996年11月にワイズコンサルティングを設立。経営者としてコンサルタントとして男としてもまだまだ成長中。

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