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経営のリカバリーショット 第5打 SARSまん延


コラム 経営 作成日:2017年4月18日

台湾経営マニュアル 経営のリカバリーショット

経営のリカバリーショット 第5打 SARSまん延

記事番号:T00070075

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本コラム執筆の目的

 ゴルフはリカバリーショットが大切だと言われますが、経営も同様です。

 経営者としてリスクに備えるのは当然ですが、どれだけ備えていても想定外の危機は訪れるものです。

 本コラムでは私自身が自社で経験した失敗とそれをどう克服してきたのかを紹介しており、少しでも皆さまの経営のご参考になれれば幸いです。

 

●2003年の状況

 前回ご紹介した「営業活動をほぼゼロにする方法」のおかげで数年は安定した業績で成長を続けていました。

 前回同様、正しい方向への努力は運命(神様?)も応援してくれるようでフォロー(追い風)がビュンビュン吹いています。

 2002年の末からは引き合いも増え「やっと今まで支えてくれた家内や義理の両親、義理の妹にも楽をさせてあげられる…」と思っていました。

 皆さんは「えっ?このころでもそんなに貧乏なの?」と思われるかもしれませんが、会社経営は本当にお金がかかるのです。

 個人事業なら1カ月30万台湾元(約100万円)の粗利益があれば十分でしょうが、会社組織にするとオフィスの家賃や社員の人件費、光熱費、欠損分の資本金の穴埋め等、とにかくお金がかかります。

 当時、家内には給料を3万元程度は払っていましたが、私はまだ無給でした。

 ですから当時の私の心境としては「これでお世話になっている人達に少しでもお返しができる」というのが偽らざる本音だったのです。

 02年の末から始まった受注の好調は03年になっても止まらず「もうそろそろ受注をお断りしなくては…」と考えていました。

 そう、その年の3月までは…

 

●SARSまん延と日系企業の対策

 02年11月、中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスによる感染症が発生しました。

 発熱、咳、呼吸困難を引き起こし、感染すれば14~15%という高い致死率を持ちます。

 当時台湾では中国帰りの台湾人が感染を持ち込み、交通機関などでの感染を通じて広がりました。

 特に台北市の和平病院では集団感染の疑いで病院が隔離され、周りはバリケードに囲まれたにもかかわらず、医師や看護婦、患者などが脱走し、大騒ぎになりました。

 政府からの指導で企業側では以下の対策がとられました。(覚えている部分のみ)

1.発熱者は1週間出勤禁止

2.発熱者のSARS感染が確認されればその企業は1カ月営業停止

3.全社員に毎日体温検査を義務付け

 さらに在台日系企業には本社より以下の指示がありました。

1.中国、台湾、香港から日本に帰国する駐在員を1週間ホテルで軟禁状態とし、発熱がないことを確認後、帰宅すること

2.人混みには極力行かないこと

3.社外の人とは極力会わないこと

4.どうしても会わなければならない場合は、オフィス外の廊下で面会すること

 

●ビジネスモデルの脆さ

 弊社にとって影響が大きかったのは、日系企業の対策の2と3でした。

 当時弊社の主要サービスは「コンサルティング」「セミナー」「委託研修」の3つでしたが、その全てが実施できません。

 契約を頂いていたクライアント企業様から「悪いね~、本社の命令だから…」と言われましたが「非常事態ですから仕方ありませんね…」としか言えません。

 全ての案件が延期となり、せっかく雇った社員たちも「日本の親から帰ってこいと言われたので…」と一人、また一人と辞め、ついには再び私と家内の2人だけになってしまいました。

 3月から始まったSARSも7月に感染指定が解除となりましたが、この間弊社の売り上げはゼロが続いていました。

 在台日系企業ではその後も様子見が続き、本社からの命令が解除されるのは9月からとの見込みでした。

 弊社では社員の離職でコスト的には身軽になったものの、せっかく蓄積していた資本金を食いつぶし「8月中には資金が回らなくなる」ことが確定していました。

 「あと1カ月資金が保てば何とかなるのに」と思いながら「人と会わなくても提供できるサービスを構築すべきだった…」と後悔は尽きませんでした。

 中小企業の社長が資金繰りを苦にして自殺するという話を聞きますが、私もそんな状態になっていたのかもしれません…

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●危機一髪に起こった奇跡

 そんな8月のある日、契約済みのクライアントから50万元の振り込みがありました。

 電話で理由を尋ねると「吉本さんが頑張っているから…」とのことでした。

 そんな理由のないお金は受け取れませんと、感謝しながらも心を鬼にしてお返しすると、また同額振り込まれてきます。

 電話でクライアント企業の経営者から「本社会長(創業者)からの厚意です」と告げられると、電話中にもかかわらず声を上げて泣き崩れてしまいました…

 8月の末で日系企業も本社からの指示が解除され、弊社は残りの4カ月で昨年1年分の売り上げを超える業績を計上しました。

 そんな忙しい中でも次の年もSARSのまん延が予想されていたので「人と会わずに提供できるサービスの構築」は急務でした。

 実はSARSで案件がなかったころ、考えていたサービスがあったのです。

 17年の現在では200社近くの日系企業様にご利用いただいている「労務顧問会員」サービスです。

 このサービスは会員に入会頂ければ、

1.会員様は弊社ホームページ上で「台湾法規」「法規解釈」等が日本語で見放題

2.日本人経営者からの労務に関する質問は弊社にメールで相談し放題

3.会員様は全てのサービスが10%引き

という内容です。

 

●リカバリーの結果

 当時、台湾労働関係法規の日本語訳はほとんどなかったので、1カ月で20社の申し込みを頂きました。

 また、弊社で新たに入社した社員達も法律の翻訳や回答案作成(私が最終チェックして回答)を通じて短期間で法律に詳しくなりました。

 さらに、これは想定外だったのですが、ウェブ上で台湾の労務関係の検索をすると常に弊社のHPがヒットするので皆さまから「労務の専門家」と認知されるようになりました。

 

●今回の格言

全ての経営環境に注意し「まさか」の事態に常に備えることが大切
 

好評により追加開催!【4月24日】
「経営者のリスクマネジメントのやり方」セミナー
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/69970.html

吉本康志

吉本康志

グループ代表兼ワイズコンサルティング社長

 1991年日本大手コンサルティングファーム駐在員として台湾駐在。1996年に起業、ワイズコンサルティングを設立~現在に至る。創業経営者として自社での実験を通して「必ず成果のあがるコンサルティングの探索」をライフワークに経営戦略、 人事労務、マーケティング戦略、IT活用等多様なコンサルティングで実績をあげている。(言語)日本語◎・中国語△

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