コラム

記事番号:T00069728
2017年3月28日15:40

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本コラム執筆の目的

 ゴルフはリカバリーショットが大切だといわれますが、経営も同様です。

 経営者としてリスクに備えるのは当然ですが、どれだけ備えていても想定外の危機は訪れるものです。

 本コラムでは私自身が経験した失敗とそれをどう克服してきたのかを紹介し、少しでも皆さまの経営のご参考になれれば幸いです。

 

●1999年の状況

 前回ご紹介した社員の独立により、コンサルティングの案件はまだ残っていたものの新規顧客開拓をするためのビジネスモデルは崩壊してしまいました。

 そこで「私でなくてもでき、日銭が入るビジネス」はないかと毎日考えていたものです。

 そんなある日、コンサルティング先である台中の百貨店の店長から「台北で流行っている日式焼肉をテナントとして入れられないだろうか?」との相談を受けました。

 私は台北でよく通っている日式焼肉の経営者数名に尋ねてみましたが「台北だけでも出店要請が多く手が回らないので、いま台中に出すのは無理」との回答でした。

 そこで半分冗談で店長に「もし良かったら私がやろうか?」と言うと、「ぜひ」と本気にされてしまったのです。

 やり手の店長だったので仕事は速く、すぐに既存のテナントの契約を終了させ場所を用意し、話はどんどん進んでいきます。

 冗談半分に言ったのに相手の対応があまりにも速く、降りられない状況になってしまったのでした。

 

●コンサルトと飲食の二足のわらじ

 当時起業時期が同じくらいで、いつも一緒にいた友達の内装デザイナーに、店の内装設計を依頼しました。

 友達からは「あなたの頼みだから設計してもいいけど、やめたほうがいいよ」と提案され、私も嫌な予感がしていましたが「理論上は儲かるし、軌道に乗れば収入が不安定なコンサル業に頼らなくても済むから…」と自分に言い聞かせるようにして、彼の提案を受け入れませんでした。

 話は前後しますが、私はコンサルティングファームに入社する前は飲食業に携わっていました。

 調理師免許も持っていたし、不採算店の立て直しをする店長だったので、飲食業はコンサルティング業よりも成功させる自信があったのです。

 

●予感的中!

 友達の内装デザインは素晴らしいもので、要望通り20坪の面積にキッチンも含めて50席を確保してくれた他、もしうまくゆかなくて業種転換したい場合には簡単にできるようになど、彼ならではのアイデアがふんだんに盛り込まれていました。

 メニューや仕入先も決定し、家内の提案で私の誕生日のちょうど1カ月後となる9月11日をオープン日と決めました。

 オープン当初は台中で日式焼肉を食べたことがない人が多く、細かなトラブルはありましたが、売り上げは計画通りに推移していました。

 この年は9月23日が中秋節だったので、肉を多めに仕入れて準備万端で帰宅した21日の深夜2時になるころ…

 ユラユラと地震がありました。

 最初はすぐやむだろうと思っていましたが、そのうちグラグラグラ、ガシャンと揺れはどんどん大きくなりました。

 のちに「921台湾中部大地震」と呼ばれる大地震だったのです。

 

●その後…

 次の日、テナントとして入居していた百貨店に行ってみると、外壁には寒気を覚えるするような、大きなひびがたくさん入っていました。

 また、地震のために電気・水道・ガスも止まり、百貨店から営業再開は1カ月後とアナウンスされました。

 被災した人たちは食事にも困る状態だったので、中秋節に向けて仕入れていた食材は全て百貨店の社員やテナントの社員に配りました。

 仕入れ量が多かったため、ビジネスとしては大損を被る羽目になったのです。

1カ月後…

 百貨店は無事再開したものの「あの百貨店は危ないらしい」とのうわさが広まり、百貨店の中は閑古鳥が鳴いていました。

 われわれの店も同様に売り上げが低迷し、ゼロの日が週に何度もあったほどです。

 準備していた資金も日に日に少なくなり、11月末時点で年越しまでは資金が持たない状況でした…

 お客さんのいないときにもがいていても仕方ないと割り切り、客足が戻ってきたときのための準備をすることに切り替えました。

 

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1.特徴あるタレの開発

 営業終了後、夜中の2時まで毎日タレを研究し、3種類の特徴のあるタレ(辛タレ、甘ダレ、酢みそダレ)を開発した。

2.ロースターを生かしたメニューの開発

 他店の状況から焼肉の売り上げは冬に落ちることが分かっていたので、焼肉のロースターを使って、故郷である北海道の石狩鍋と鴨鍋をメニューに加えた。

3.アルコール売り上げの向上

 焼肉に合わせてチューハイや赤ワインの組み合わせを提案し、1杯目は無料で提供することでアルコール類の売上増を狙った。

4.話題性のあるイベント開催

 台湾初の「焼肉食べ放題」や「焼肉でクリスマス」(プレゼント付き)、年越しそば無料提供、正月イベントなどのイベントを2週間単位で行った。

 

●リカバリーの結果

 「本場北海道民が作る石狩鍋」「男女の指輪を合わせるとI Love Youという指輪がプレゼントされる焼肉屋」などとメディアに何度か採り上げられる幸運にも恵まれました。

 12~1月には計画の売り上げを回復し、2月は情人節(バレンタインデー)イベントの大成功で過去最高売上高を記録することになります。

 そして週に一度は「フランチャイズでやらせてほしい」という人が現れ、土日は予約がないと入れない繁盛店となりました。

 このころになると焼肉店の利益はワイズコンサルティングの利益を上回りました。

 ホッとしたのもつかの間、次なる苦難が…

 

●今回の格言

経営者が悪い予感がするときは無理してでもやめたほうが賢明

〜情報漏えい、労働争議、与信、BCP…〜
経営者のリスクマネジメントのやり方
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/69441.html

吉本康志

吉本康志

Executive Consultant

日本の大手コンサルティングファームの駐在員として台湾駐在、1996年11月にワイズコンサルティングを設立。経営者としてコンサルタントとして男としてもまだまだ成長中。