記事番号:T00000011
● 台湾の新卒者事情
台湾における就職事情は日本のそれと大きく違います。
まず、入社時期は日本の様に一斉入社の習慣はなく、中途採用と同様に随時入社してきます。
就職者側から見ると、学校は就職の斡旋はほとんど無く、企業説明会もありません。
学生の多くは卒業後(男性は退役後)、働きたくなった時点から自分の力で就職活動を行うのです。
また、入社前、入社後も「ビジネスマンとしての基本」や「社会人としてのマナー」を学ぶチャンスが無いのも日本と大きく違うところです。
● 事例:試用期間中の不採用
牟田口総経理が新しく採用した荘秘書は新卒だったが日本とアメリカに留学経験があり、日本語・英語はネイティブであった。
また、日本の大学の経営学科卒業後、アメリカでMBAを取得したため、経営知識も豊富な優秀な人材で牟田口総経理も期待していた…
…2ヶ月が経過し、荘秘書のビジネス能力は非常に高かったが牟田口総経理は総秘書に非常に不満を持っていた。
例えば、
1. あいさつをしなく、周りの人との協調性が無い。
2. 業務は早く正確にやり遂げているものの経過報告や最終報告が無い。
3. 電話応対が悪く知り合いの日本人からも度々注意を受ける。
4. まだ途中の仕事が有っても、6時になるとさっさと帰ってしまう。
5. 勤務中、頻繁に携帯電話に私用電話が掛かってきて長く話している。
等々である。
非常に優秀なのだが、何度か注意しても直らないので、管理部長に「試用期間中なので不採用にし、別の人材を捜してくれ」と要望した。
管理部長は「試用期間中でも不採用にすると解雇手当を支払わなくてはなりませんが宜しいですね。」と言ってきた。
牟田口総経理は「試用期間中だぞ。なぜ解雇手当を払わなくてはならいのだ!」と出かかった言葉を飲み込んだ…
● 解説
台湾の現在の労基法では試用期間の記載がありません。
試用期間の記述が無くなった事に対し、労工委員会の解釈では「正式採用と同様に扱わなければならない」とあります。
従って、上記の事例では解雇手当を支払う義務があります。
しかしながら、上記の事例の根本的問題点は「解雇手当を払うかどうか」ではなく、荘秘書が「ビジネスウーマンとしての基本を知らない」事にあります。
私達(日本人)も、新入社員の頃を思い出してみて下さい。
学校で、会社で、上司に、先輩に、お客様に教えて頂きながら成長してきました。
荘秘書のビジネススキルは高いのですから、新入社員研修等で社会人としての基本を学ばせては如何でしょうか?
ワイズコンサルティング 吉本康志