記事番号:T00000015
● 転職シーズンのはじまり
台湾では旧正月明けは「転職シーズン」になります。
ボーナスも既に貰っていますし、新しい1年が始まりますので、今の仕事に不満が有る人にとっては一番の「辞め時」なのです。
大切に育てた社員が辞めてしまうのは寂しいものですが、そんな感傷に浸っている暇はありません。
社員が依願退職をする場合、適切な対策をとっておかなければ大変な事になりかねません…
● 事例:手塚総経理の憂鬱
台湾に駐在5年目になる手塚総経理に今年も一年で一番憂鬱な季節が訪れた。
毎年旧正月明けに依願退職者が数名出てくるので、「今年は誰が辞めるのか?」と、毎年不安な想いをしているのだった。
初出勤の昨日も3年勤めた女性社員が「次の仕事が決まっているので、今月いっぱいで辞めます。」と言ってきている。(台湾では「辞めさせて下さい」ではなく「辞めます」と言って来る)
昨日は一般職だったから幾らでも代わりがいるが、幹部や優秀なセールス、エンジニア等は、そうそう代わりはいない。
社員から声をかけられる度にハラハラドキドキする時期なのだ。
心を鎮めようと、電子メールを見てみると、昨日の女性社員からメールが来ていた。
「そう言えば今日は出勤していないが、心変わりでもしたのかな?」と思い、メールを読んでみて青ざめた。
内容の概要は、以下の通りである。
1. 昨日私は手塚総経理に不当解雇された。
2. 速やかに解雇手当と今月分の給料を自分の口座に振り込む事を望む。
3. なお、この文章は郵送で既に労工局にも送付している。
旧正月明けから、煩わしい事がまた増えた…
● 解説
社員が自分から「辞めます」と言っておきながら、次の日には「不当解雇だ」と主張するケースは昨年の暮れから、数多く相談を寄せられる様になりました。
中には、事例の様にいきなり労工局へ告訴するケースもあるほどです。
この様な行動をとる背景は、本人にはそのつもりは無かったが、同僚や家族にそそのかされてというケースがほとんどです。
これらのケースで揉めた場合、一番問題になる事は、「本人が依願退職した」という事実を立証できない事です。
退職者が増えるシーズンですので、退職の相談や報告を受ける場合は以下の準備をお勧めします。
1. 会話内容を録音する。
2. 依願退職の場合は、その場で本人に依願退職届けを記入させるか、一筆書かせる。
ちなみに労工局に訴え出ても裁判をするわけではなく、仲裁してくれるだけですので、ご心配なく。(但し、労働者寄りの仲裁になります)
ワイズコンサルティング 吉本康志