記事番号:T00001644
S財閥で小売業チェーンを展開するA社は迷走を続けていた……。
●A社の苦悩
S財閥の宋董事長(会長)は当時としては斬新なビジネスモデルを導入したA社を創業し、一代で台湾有数の企業グループを創り上げていた。
しかしここ数年はグループ全体の成長は続いていたものの、創業企業で中核企業であるA社は苦戦を強いられていた。
近年、外資と組み新しいビジネスモデルを武器に参入してくる競合の増加により、ここ数年の業績は昨年対比80~90%と低迷していたのだった。
A社は現状を打開すべく、3代目の総経理(社長)に若くて優秀な生え抜きの幹部が抜擢されたのは3年前の事である。
3代目総経理は「新業態開発による成長」を掲げ、積極的に新コンセプト店舗の展開を行った。
そして2年間で5店舗の改装に踏み切ったが、新規顧客に受け入れられるどころか、既存顧客も逃がすこととなり、 大失敗に終わってしまった。
●張氏の就任
責任をとって3代目総経理は辞任した後、4代目総経理である張氏は社外からヘッドハンティングにより招聘されてきた。
張総経理は米国の有名大学でMBA取得後、米国の小売チェーンで幹部として活躍した経歴の持ち主であった。
その張総経理に与えられた使命は、当然ながらA社の業績回復である。
張氏は1月の就任以来、現状把握に精力的に取り組んだ。
その結果、明らかになったのは、「人材育成・POSシステム・バイイング機能・物流機能と個々は優れているものの、ビジネスモデルが古いために競争力が無くなっている」ということであった。
張総経理は「早急に競争力のある業態開発が必要」という結論に達し、新業態のコンセプト確立に向かい始動を始めた。
●抵抗勢力
しかし幹部たちは張総経理の指示には従うものの、動きは鈍かった。
また董事会(取締役会)においても、前回の反省からか、新規投資にはみな消極的だった。
この八方塞がりの状況を、どう打開すれば良いのだろう……。
(その2)につづく
ワイズコンサルティング 吉本康志
※本コラムは事実を基にしていますが、複数の事例を交えてストーリーを展開していますので、個人および団体が特定できないようになっています。