記事番号:T00002152
●前回までのあらすじ
A社は幹部研修により、年末までに業績向上を実現する必要があった。受講生たちは第二単元以降の宿題で通常業務をこなしながら、一カ月間にも及ぶ宿題に取り込んだ。その成果は……。
●董事会と幹部の協力を得るには
第4単元ではケーススタディーをグループ討議にて実施した。
ここではA地区の各分類の商圏内シェア・立地環境・競合状況を把握し、店舗全体のコンセプトづくり→商品分類の見直し→売場レイアウト変更という実践的な内容で行った。
この時点での受講生の能力からすると、同様のケーススタディーを1時間で解を導き出すことも可能であったが、時間を十分に取り、徹底的に分析し、分析に基づき仮説を立て、全員の智恵を出し尽くして対策を議論した。
当然ながら宿題は、自店舗での売場レイアウトの変更である。実際のレイアウト変更は営業時間外に行う決まりであったが、これも全員が実施してきた。
このようなハードな研修と宿題を続けるうちに売り上げは徐々に向上し、ここ数年昨年比割れが続いていたが、昨年実績を超える店舗が増えてきた。
そしてついに11月の創業祭がやってきた。創業祭では全社一丸となり研修で学んだスキル以外にも、各店舗で自主的に、朝夕のビラ配り・営業時間の延長などできる努力を全て行った。
その結果、創業祭では昨年比売上128%、11月全体では116%と、当初の目標を達成することができた。
創業祭の営業終了時には各店舗から本社に全社売上状況の問い合わせが殺到し、お互い連絡を取り合い達成を喜んだそうである。
12月初旬に受講者が提出してきたレポートには、それぞれ自信と達成感および全社的一体感が漲っていた。
しかし、戦術・戦闘レベルで戦えるのはここまでである。短期的には売上向上が続いても、ビジネスモデルとしての競争力が急速に低下していることは変わらない。
12月末の董事会では総経理の成功実績および社員たちの能力と可能性が認められ、来年度は1年間煮詰めてきた新業態店舗を出店することが決まった。
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(カルテ3 完)
※本コラムは事実に基づいていますが、複数の事例を交えてストーリーを展開していますので、個人および団体が特定できないようになっています。
ワイズコンサルティング 吉本康志