記事番号:T00002043
●前回までのあらすじ
S財閥で小売業チェーンを展開するA社は迷走を続けていた。4代目の総経理となった張氏は「新業態開発」を進めようとしたが、董事会や幹部の協力を得られず、打開策として費用をかけずに小さな成功事例を作るため、幹部研修を行なうことになった…
●董事会と幹部の協力を得るには
研修に多くを期待する経営者は多いが、既存の研修を行うだけでは成果は期待できない。研修で成果を上げるには、「成果を上げるための仕組みを研修の中にビルトインする」必要がある。A社に求められる成果は「全社業績の向上」なので、以下の仕組みで研修を行うことにした。
まず、講義で学んだ理論・技術を、ケーススタディーで実践する。ケーススタディーの作成は、実際の数字を用いて実戦的な内容にした。次にケーススタディーで検討した方法を、自分の店舗に持ち帰り実践する。多くがが失敗するはずなので、上司および本社のサポートを得て再挑戦し、実施内容と成功要因・失敗要因をレポートにまとめ、次回の研修で発表した。
いよいよ実際の研修が始まり、第一単元では店長・バイヤーなど参加者のレベル把握に重点を置いた。そこで明確になったことは、
1. 各人のスキルと仕事に対する意識は業界トップクラスであり、過去に多くの研修を受講していたが、即現場で役に立つ研修を強く望んでいた。
2. 業界トップクラスのPOSが導入されているが、POS DTAを売上向上に結びつけるためのツール(分析手法)が無い。
3. 本社幹部と各店長はそれぞれ一生懸命努力しているが、立場の違いから誤解が発生し、両者の関係は非常に悪い。
ということであった。
第二単元の「商圏分析と商圏内シェア」では、以下の内容で実施した。
●基本講義1:商圏シェアと競合に与える影響
●基本講義2:競合店設定と競合店調査手法
●ケーススタディー:「A店の競合対策」
1. 商圏内でのA店大分類の商圏シェアを算出
2. 大分類商圏シェアから、競合店を決定
3. 競合店に勝つためのカテゴリーを決定
4. 売り場面積・アイテム数・フェイス数から勝つための理論的方法を抽出
5. 競合に勝てる戦略・戦術の決定
6. 各グループ別に発表した後、最善の方法を全体で検討
●基本講義3:競合に勝つための各種戦術
という具合に行った。
問題は現場で実践し、成果を上げられるかどうかである。第二単元の宿題は、
1. 自店舗中分類の商圏内シェア調査
2. 競合店調査(重点競合店二店舗)
3. 競合に勝つための売場改善
とし、各店長及び本社スタッフ・上司が一丸となって、通常業務をこなしながら一ヵ月間宿題に取り組むことになった。
(その4)につづく
ワイズコンサルティング 吉本康志
※本コラムは事実に基づいていますが、複数の事例を交えてストーリーを展開していますので、個人及び団体が特定できないようになっています。