第9回 建設業界 ホテル売却の背景に何が?


コラム 経営 作成日:2016年3月17日

コンサルタントが斬る台湾ニュース

第9回 建設業界 ホテル売却の背景に何が?

記事番号:T00063064

 皆さん、こんにちは!ワイズコンサルティングの陳逸如です。このコラムが前回掲載されたのは2010年10月でした。実に5年半ぶりの再開で、執筆者も今回より陳に代わりますので、どうぞよろしくお願いします!今回は台湾の建設業界の現状についてご紹介します。

 16年3月1日付のワイズニュースは「売却求めるホテル大幅増、中国人客の減少観測で」という記事をトップで報じた。1月の総統選の結果、台湾の政権交代が決まり、中国人観光客が大幅に減るのではないかという観測が相次いでいる。15年に来台した観光客750万人のうち、約46%に当たる343万人が中国人だった。中国人観光客が来なくなると、土産店やバス業者、ホテル業界など観光産業は大きな影響を受けるだろう。

 同記事によると「台湾全土の現在のホテル数は少なくとも3,070軒。売却先を求めているホテルは50~60軒で、うち6割は建設会社などホテルが本業ではない」という。

●参入ブームから売却ブームへ?

 ここ数年、台湾の不動産市場が低迷している。特に住宅市場は、特種貨物労務税(ぜいたく税)の導入をはじめとした引き締め政策により高値ピークが崩れ、投資意欲が低下して不況に陥っている。本業で既に高い収益が見込めない建設業界では、経営リスク分散のため、将来性のある観光業界に参入するケースが少なくない。

 建設業界売上高ランキングトップ50社のうち、ホテル事業を有する企業は20社もある(表1)。また、6社が現在新たにホテルを建設しており、3軒が今年中のオープンを控えている。建設業者によるホテル経営はまさにこれからという時期なのに、果たしてホテルを売却してしまうのだろうか?

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●ホテル売却の真意は?

 図1は台湾における建設業の主要企業の規模と収益性を表すグラフだ。事業規模を横軸に、収益性を縦軸において業界企業を配置してみると、小規模企業と大規模企業が収益性に優れ、中規模企業が相対的に収益性で劣るように見える。この関係をグラフで表すとちょうとVの字を描くようになるため、V字カーブと呼ばれている。

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 図1を見ると、中規模企業の収益性が悪く、死の谷と呼ばれるところに位置付けられる企業が数社存在している。この数社の中には、台北市北投の日勝生加賀屋を経営する日勝生活科技社、新竹喜来登飯店(シェラトンホテル)を経営する富邑建設社など、ホテル事業を持つ企業もある。2社とも現時点ではホテルを売却するという情報はない。しかし、ニュースで報道されたホテルの売却を検討している建設会社は、売却理由が中国人観光客の減少観測によるものだけではなく、マンションが売れなくなり、資金繰りが苦しくなって、死の谷に陥りかかっているからだ、ということは考えられないだろうか。

●V字カーブに見る戦略

 どんなビジネスにもV字カーブは存在するといわれている。例えば、腕の良い板前が一人でやっているすし屋があるとしよう。一人でお寿司を握っている時は良いサービスでおいしいすしを提供できるので、客単価も利益率も高くなる。しかし、弟子を雇い育てると、コストがかかるので利益率は低下し、場合によっては死の谷に墜ちてしまう。谷を乗り越えるのに肝心なのは経営者の選択だ。高いレベルのサービスと料理を提供する小規模のすし屋に徹するか、システム化して広域展開する回転寿司のように規模を追求するかの選択が必要だ。中途半端に店を拡大するような、どっちつかずのところは儲からないのだ。

●事例に学ぶ中国語

 中国語に「前功盡棄」(qián gōng jìn qì)ということわざがある。何かをやるには最後まで貫けば必ず何らかの成功を手に入れるが、中途半端にやめると今までの苦労も成果もすべて水の泡になるという意味だ。多角化戦略で企業の成長を図る建設業者は、前功盡棄にならないことを祈るばかりだ。

陳 逸如

陳 逸如

シニアコンサルタント

2006年にワイズコンサルティングに入社。コンサルティング、リサーチ、研修、セミナーで活躍。きめ細やかな心配りと、論理的思考力にはファンも多い。経営全般、マーケティング、人事労務のコンサルタントとして活躍している。ワイズリサーチ総経理。

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