第6回 M&S台湾撤退の根本原因を探る


コラム 経営 作成日:2008年7月10日

コンサルタントが斬る台湾ニュース

第6回 M&S台湾撤退の根本原因を探る

記事番号:T00008720

 
●マークス&スペンサーの業績低迷原因は?

08年7月9日のワイズニュースは「マークス&スペンサー、業績不振で台湾撤退へ」とトップ記事で報じている。報道では台湾で展開する3店舗はすべて業績が目標に達したことはなく、目標の半分以下の月もあったという。これに対して台湾の記者や有識者達は「台湾の文化に合わなかった」、「知名度が低い」、「陳列や品揃えが悪い」などの意見を新聞やネットでもっともらしく語っている。

マークス&スペンサー(M&S)は英国人なら知らない人はいない大手小売業である。産業界に与える影響も大きく、M&Sの業績が下がるだけで「消費意欲が下がった」と見なされ、イギリス小売業全体の株価が下落するほどだ。またグローバル化も進んでおり、イギリスの520店舗に加え、世界30カ国で760店舗を展開している。同じ中華圏でも香港では成功しているし、世界中で台湾市場だけが特殊であるわけがない。

●戦略キャンパスによる分析

「ブルーオーシャン戦略」のフレームワークの一つである「戦略キャンパス」を使い、M&Sの競争優位性を分析してみた。M&Sの業態は「スーパー以上、百貨店以下」と言われるので、日系の百貨店と、代表的な量販店である「カルフール(家楽福)」とで比較した。

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まず驚いたのが、M&Sが台湾では高価格政策を採っていることだ。本社のCEOであるスチュアート・ローズ氏がハーバードビジネスレビュー07年10月号で「商品の品質は高くなければならないが、価格も手ごろでなければならない」と語っている。しかし台湾ではすべてがプライベートブランド(自社商品)であるM&Sが、ナショナルブランドと同等の価格設定なのだ。

また、M&Sの他社にまねできない強みが「商品の安全性」や「倫理的調達」にあることを、知っている台湾人消費者はほとんどいない。M&Sが英国人に支持されている大きな要因である、「プライベートブランドなので商品を材料調達の段階から管理しており、衣料・食品を問わず安全」という、一番のセールスポイントを積極的に伝えようとしていないのだ。もし消費者に「安全と安心を売る小売業」として認知されていたら、それこそ「ブルー・オーシャン戦略」となり、価格や流行などの従来の競争要因とは違う競争力を手に入れられていたに違いない。

●M&S撤退の真意

M&Sが台湾で「価格」や「安全」などの独自の優位性を発揮できなかった原因は「株主が原因」であると私は考えている。台湾ではM&S株の40%を統一超商が所持しており、カルフールは統一企業と統一超商を合わせて92%以上を統一側が所持している。

 統一は、「始めて間もない、利益を折半しなければならない企業(M&S)」が、「現在の主力であり利益のほとんどを独占できる企業(カルフール)」のビジネスモデルを脅かす可能性を懸念したのではないだろうか。


ワイズコンサルティング 吉本康志

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