コラム マーケティング 台湾事情 作成日:2016年3月31日
コンサルタントが斬る台湾ニュース記事番号:T00063330
2016年3月17日付のワイズニュースは「HTCはVRに特化を、年間販売110万台が目安」という記事をトップで報じています。記事の中に「外資系証券会社から、HTCはスマートフォン市場をあきらめ、VR製品に特化すべきとの提言が飛び出した」とあります。宏達国際電子(HTC)は97年の設立以来、モバイル端末の開発に専念してきました。今もスマホの売上高が全社売上高の90%以上を占めているHTCは、本当にスマホ市場をあきらめた方がいいのでしょうか?
●早期市場参入が成功パターン
HTCのこれまでの歴史をたどってみると以下の経緯があります。
98年、世界初のワイヤレスポケットPC
02年、世界初のウインドウズモバイル
04年、世界初のキーボード付きスマホ
05年、世界初の3Gスマホ
08年、世界初のアンドロイドフォン
HTCは新しい技術を他社よりいち早く取り入れ、他社がまた様子見の段階で、果敢に市場に参入することで発展してきました。
図1はHTCの各時期の主力製品を、プロダクトポートフォリオおよびライフサイクルで表したイメージ図です。どの製品も早い段階で市場に参入していることが分かります。導入期では需要量が低く、利益率も低いですが、一部のアーリーアダプター(初期採用者)を早期に囲い込むことが可能です。成長期に入ると、需要量が急激に増加し、既にある程度名が知られているHTCは一気に販売量を拡大することで売上高を増やしてきました。
図1:HTC製品ポートフォリオおよび各製品ライフサイクルのイメージ図
●VR製品は成功するのか?
世界最大級の投資銀行ゴールドマン・サックスの発表によると、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)の潜在市場規模は25年にソフトウエアが350億米ドル、ハードウエアが450億米ドルになると予想されています。
これまでのHTCの発展戦略をみると、成長期に入る手前の段階で市場に参入することが多かったです。今回のVR製品の過去との違いは、導入初期から参入していることです。VR端末の普及にどれくらいの時間がかかるか、また、VR端末はスマホほどのビジネス規模になるかはまだ未知数です。HTCはこれまでと同様に一極集中で成功を収めるには、マーケットの啓蒙活動に力を入れ、早くVR市場を立ち上げる必要があります。
●事例に学ぶ中国語
中国語で孤注一擲(gū zhù yī zhì)ということわざがあります。本来は賭博の際に一か八かの勝負にでるとの意味でしたが、現在ではビジネスの場面で勝敗の行方を左右する行動をとるときにも使われています。HTCは外資系証券会社の提言通りにスマホをあきらめて、VR製品に特化することになれば、まさに「孤注一擲」となりますね。
陳 逸如
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