記事番号:T00109417
「給料について総経理(日本人駐在員)は総額と人件費率だけの把握で問題ないでしょ?細かな中身は現地スタッフにお任せください!」制度見直しのお手伝いをさせていただいた日系Y社様(ワイズではない!)の台湾人管理幹部よりお聞かせいただいた名言(迷言?)です。
皆さま、こんにちは。ワイズコンサルティング佐藤でございます。今回のコラムは前回に引き続き「どうする総経理?給料編2」として、過去の実例を掘り下げお伝えしてまいります。
たしかに社員数が何百人・何千人規模の会社様であれば名言(迷言?)が当てはまるのかもしれません。ちなみに先のY社様、100名に満たない規模です。
現実問題として「給料の構成がどの様になっているのか?」を駐在経営者が知る機会はなかなか無いかもしれません。私が給与制度見直しのお手伝いをさせていただく際には、必ず給料構造を紐解きます。単純に「良い悪い」を見るのではありません。老朽化してないか?合理性が保てるか?誰もが理解できる仕組みか?このような点に着目し掘り下げてまいります。
「秘密の構造(パンドラの箱?)」を開けてしまった事例を紹介します。
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給料といえば当社。年に1度、給与に関するセミナーを実施しております。本年も6月20日(火)に「日系企業/台湾企業の給与水準と台湾人社員の希望」というテーマで開催いたします。
この機会に自社と賃金の仕組みを見直してみませんか?セミナーの詳細はこちらで確認願います。
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日系企業/台湾企業の給与水準と台湾人社員の希望
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開けますか?パンドラの箱
先のY社様の事例です。「確かに総額や全体の人件費率は把握しています。細かな内容も一応聞いて入るのですが、お恥ずかしい話、理解が追いついていないまま時が過ぎてしまいました」T総経理は正直に話してくださいました。ゆっくりと紐解いていきます。
まず給料体系、大項目では3種類。「基本給」「付加給」「手当」になります。ご存知とは存じますが、台湾では「基本給」という言葉に法的な拘束力はありません。言い換えれば、各企業が任意に設定しているだけです。法的な拘束力があるのは「月額経常性給与」になります。(月額経常性給与についてはワイズHP労務顧問ページでご確認ください。申し訳ございません。閲覧には会員登録が必要になります)
ワイズHP労務顧問ページ
https://www.ys-consulting.com.tw/service/labor/index.html
さてY社様。大項目自体はシンプルです。複雑なのはこの先です。基本給が更に4項目に分類されています。「学歴給」「職能給」「職務給」「資格給」になります。
あえて「学歴給」を否定はしませんが、新卒採用の少ない台湾。何を学んできたか?も重要ですが、何を培い、今後の仕事でどのように活かすか?により注力したいところです。
「職能給」これは複雑でした。社員階層ごとに階層・等級(薪等)を割り振ってあり、年度の業務結果により上昇させます。上昇の詳細ルールは存在していません。階層は14階層。等級は各階層で40等級あります。加えて、上位階層に昇格せず各階層の上限に達した場合、別の階層「年功階層」に移動するのです。年功階層で2年以内に昇格しない場合は、昇格機会が失われ永遠に年功階層を彷徨うことになるそうです。
続いて「職務給」これは仕事の難易度、責任の重さ、専門技術、肉体的な疲労度により設定されます。全部で61段階!金額幅は25元。どう割り付けるのかを聞きましたが、合理的な回答は得られません。
各項目に金額一覧表は存在。実際は大変に縦長でした。
最後は「資格給」です。役職との紐づけはあるのですが、別途「役職手当」は 存在しています。役職数17種それぞれの役職に3~9等までの等級があり、全部で64種類。これらを組合せてようやく基本給です。どうやってステップアップするかも、それぞれの項目で違い(合理性は不足)、総経理ばかりか社員も理解をしていません。
だから、私が必要なのです!
先の管理幹部は「その通り。皆、理解していません。だから私の存在が必要なのです。この制度は変えませんよ!」
この他にも付加給・手当でも同様に複雑怪奇な仕組みが箱から次々と出てきました。この箱を閉じてしまうという選択肢も残されています。先の管理幹部は箱を閉じることを強く勧めてきます。
総経理が一言「せっかくだから開けちゃおう(見直そう)」管理幹部が少し青ざめ、長い戦いが始まります。
どうする?総経理。
次回「給与編 パンドラの箱②-2」
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本文に記載の事例は筆者の実体験・実話を基にしたフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。
佐藤豪紀
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