記事番号:T00120686
本コラム執筆の目的
ゴルフはリカバリーショットが大切だと言われますが、経営も同様だといえます。経営者としてリスクに備えるのは当然ですが、どれだけ備えていても想定外の危機は訪れるものです。
本コラムでは私自身が自社で経験した失敗とどう克服してきたのかを紹介してゆきます。皆様のご参考になれば幸いです。
●2009年の状況と忍び寄る陰
2007年に立ち上げた新規事業である「ワイズニュース」はワイズのジャンヌ・ダルク登場により好調な伸びを見せていました。
「経営のリカバリーショット」Season1 7番ホール参照
https://www.ys-consulting.com.tw/column/70394.html
また本業であるコンサルティング事業の方はワイズニュースの立ち上げに伴い、記事本数を補う目的で全社員がコラムを執筆したことが功を奏し、多くの引き合いを頂いていました。
ところが!当時の他事業は順調に成長していたものの、創業以来行なっていた「リサーチ事業」だけが大幅に衰退し、案件が激減していました。
このままではリサーチ事業が消滅しかねないと社内で原因を検討したところ「コンサルティング」と「ワイズニュース」の知名度が高まったことで、相対的に「リサーチ事業」の知名度が低くなってしまったのではないか、という結論に達しました。
●リサーチはワイズの創業
創業当初は私も30歳と若かったせいか、社名は「コンサルティング」と付けていたものの現在のように「コンサルティング」や「研修」といった案件依頼はほとんど無く、探偵の様な調査案件のご依頼しかいただけませんでした。(尾行調査・浮気調査など)
その他にも、現在ならコンプライアンス上受けられない産業スパイのような調査も活きてゆくために不本意ながらも受けていました。(内緒です)
当時リサーチ報告書を確認しながら「こんな情報どうやって入手したの?」と尋ねると若い女性リサーチャーたちは「社長は知らないほうが良いです…」と顔を曇らせていたものです。
2009年までには真っ当な調査や研究案件へと変化してきたものの案件数激減により消滅の危機となっていたのです。
私は今後ビジネスを拡大してゆく上で高度なリサーチ力は不可欠ですし、競合の市場参入時にもリサーチ力が強力な差別化要因になると考えていました。
そこで「リサーチ事業の復興」を当時入社4年目の陳逸如に託すことにしました。
陳は入社以来、毎年社員投票による「年間MVP」を連続受賞するほど優秀で、何よりも彼女が担当するリサーチはクライアントに大好評を博していました。
当時は人手不足で他のメンバーは手が回らず、20代前半の若手社員に創業以来続く事業の復興を託すこととなったのです…
●復興の方向性
陳によるリサーチ事業復興の第一歩は、「ワイズリサーチ」という会社をワイズコンサルティングの子会社としてスピンオフすることから始まりました。
子会社であるワイズリサーチ設立の目的は以下の通りです。
1.別会社にすることで既存のしがらみから逃れ、経営の自由度を高められる。
2.社名を「ワイズリサーチ」とすることで、「リサーチ機能」を日系企業や日本企業にアピールできる。
3.ワイズコンサルティングの下請けではなく、独自に受注活動を行いコンサルティングやメディア事業との相乗効果を狙う。
4.コンサルタントは育成に時間がかかるが、リサーチャーは優秀な人材を雇用できれば即戦力となるため、まずリサーチャーとして採用し、その後コンサルタントにステップアップさせることで、マーケティングに強い人材育成システムが構築できる。
5.別会社にすることで、成功も失敗も明確になり、陳のモチベーション向上につながる。
●その後…
子会社として独立性を持たせたため、ワイズコンサルティングの営業チームは利用しない前提で、ワイズリサーチは独自のマーケティング戦略を求められました。
数多くの挑戦と失敗を重ねた結果、うまくいったショット(手法)をいくつかご紹介します。
1.Webサイトで実績を紹介
受注する際に「ワイズでリサーチレポートを再販してもよいか?」をクライアントに尋ね可能な場合は20%割引としました。
こうして再販可能となったレポートはWebサイトに掲載し、多くの方にリサーチ実績を知って頂ける仕組みができました。
2.「機械業界ジャーナル」の発行
安定した収益基盤の確保とWebサイト、リサーチページのコンテンツ増加を目的に、週刊で「機械業界ジャーナル」を発行しました。
本来なら、台湾では電子業界に焦点を当てるべきかもしれませんが、当時「営業秘密法」が厳格化されたことや、すでに専門の電子業界誌が存在していたことが理由で、機械業界を選択しました。
3.「業界レポート」の執筆
不定期で「ワイズの業界レポート」を執筆し、Webサイトに掲載しました。
これを読んだお客様が、さらに詳しい内容を求めてリサーチ依頼をしてくださることが増えました。
4.ワイズ経営資源のフル活用
「機械業界ジャーナル」や「業界レポート」は一部をワイズニュースに掲載し、その後Webサイトにも掲載することで「営業を使わないマーケティング」(プルマーケティング)が実現しました。
●リカバリーの結果
こうして消滅寸前だったリサーチ事業は、現在ではグループ内13事業における主要5大事業の一つとなり、毎年10~20%の売上構成比を占めるまでに成長しました。
担当者だった陳は、現在ワイズコンサルティング社の副社長兼ワイズリサーチ社の総経理として活躍中です。
●今回の川柳
「バンカーも、諦めなければ、起死回生」(やすし)
経営のリカバリーショット Season1
経営のリカバリーショット Season1 1番ホール 社員の独立
経営のリカバリーショット Season1 2番ホール 飲食業参入
経営のリカバリーショット Season1 3番ホール 飲食業撤退
経営のリカバリーショット Season1 4番ホール ITバブル崩壊
経営のリカバリーショット Season1 5番ホール SARSまん延
経営のリカバリーショット Season1 6番ホール 家内との別れ
経営のリカバリーショット Season1 7番ホール 投資失敗?
吉本康志
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