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台湾プロ野球の中信兄弟(中信ブラザーズ、前身は兄弟エレファンツ)は、「中華職業棒球連盟」(CPBL)に1990年の初年度から加盟している老舗球団で、2度の3連覇は史上唯一、年間王者7回は統一セブン-イレブン・ライオンズと並び最多です。台湾で最も人気の球団として知られ、「CPBLファンは中信ブラザーズファンと野球ファンに分けられる」という冗談もあります。
ただ、ここ数年、革新的な球団経営に成功しているラミゴ・モンキーズ(前身はLa Newベアーズ)も、中信ブラザーズに負けない人気となっています。
韓国の応援スタイル導入
ラミゴは11年1月に本拠地を高雄から桃園市に移しました。球団経営者は老牛皮国際(La New)の劉保佑董事長の息子、劉玠廷氏です。
劉玠廷氏は桃園地区の野球ファンをターゲットに据え、全てのホームゲームを桃園国際野球場で行うようにしましたが、市街地から遠く交通が不便なため、最初の2年間は観客数がなかなか増えませんでした。
ラミゴは球場の雰囲気を盛り上げるべく、韓国プロ野球の応援スタイルを導入。ハイテンションな音楽、スポットライトや花火の打ち上げなどでファンを楽しませました。また、LamiGirls(ラミガールズ)というチアガールチームも結成し、露出の多い衣装でセクシーなダンスを踊り、多くの男性ファンを集めました。13年は優勝できませんでしたが、観客数は計35万人と、前年比165%増加しました。
観戦ムード盛り上げに欠かせないラミガールズ(YSN)
「ロッテ・ジャンプ」も拝借
14年からは米大リーグ(MLB)に倣い、対戦相手のファンや応援団の座席を外野に設置し、内野全席をラミゴのファンが埋めるようにしました。また15年には千葉ロッテマリーンズファンの応援スタイル「ロッテ・ジャンプ」を取り入れました。ラミゴの攻撃時に全員立って歌ったり、踊ったり、リズムに合わせて拍手しながら応援します。これによりファンの一体感が高まり、球場の雰囲気は最高潮に達するのです。
週末のホームゲームでは、国防部との提携による「アーミー・パーティー」も披露。試合開始前に陸軍・海軍・空軍が球場内でパレードし、空にはミラージュ2000(戦闘機)も飛ばします。選手や応援団も軍服を着用し、多くの迷彩柄商品を球場で販売しています。入場人数は年々成長し、年間売上高は15年には2億台湾元へと、11年の3,000万元の約7倍に増えました。
MVPが電撃移籍
15年シーズンで、ラミゴの主将、林智勝(リン・ジセン)内野手(34)は台湾球界初のトリプルスリー(打率3割8分、31本塁打、30盗塁)を達成し、最優秀選手(MVP)に選ばれました。同年11月に開催された「プレミア12」では台湾代表チームの主将として出場し、大会出場選手の中で最多の4本塁打を記録しました。
林選手はシーズン終了後、フリーエージェント(FA)宣言をしました。しかし10年以上もラミゴとその前身に在籍していたので、業界やファンは「形式上の宣言」で移籍はないと考え、「中信ブラザーズに興味あるが、接触していない」という林選手の言葉を信じていました。ところが今年1月4日、中信ブラザーズが林選手の入団を突然発表。年俸変動制の3年契約、総額3,600万元プラス出来高で、平均年俸は1,200万元と台湾プロ野球の過去最高額となりました。
林選手の電撃移籍の理由については、本人と家族がラミゴや監督への不満があったなど、メディアや野球ファンの間で議論となりました。その1週間後、林選手の同期で14年に引退した石志偉(シ・ジウェイ)氏も、中信ブラザーズの2軍打撃コーチ補佐として入団しました。ラミゴ経営者の劉氏へのショックは大きかったようで、「だまされた気分だ」と発言しました。
両球団のファンはこれまで、人気と実力でどちらが上かの単純なライバル関係にありましたが、遺恨が生じたことで感情的な対立が起きています。
19日に因縁の対決
今年の台湾プロ野球リーグは今週19日に開幕し、ラミゴは「大勝Party」と称した開幕戦で中信ブラザーズをホームに迎えます。因縁の対決の最初のラウンドで、どちらに軍配が上がるのか今から楽しみです。
段婉婷
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