記事番号:T00131017
■懐かしくて、新しい
教育訓練が幕を閉じた日の夕刻。総経理室には長島総経理、劉協理、李経理の3人が顔を揃えていた。これから李による申請アプリのお披露目だ。
「始める前にお願いがあります」李が真剣な面持ちで釘を刺した。「これは私が作った『決算書承認申請』アプリです。どれほど不格好な出来映えでも、決して怒らないと約束してくださいね」「分かった、約束するよ」長島は苦笑しながら頷いた。
李がパソコンを開き、kintone(キントーン)へログインする。長島と劉の視線は吸い寄せられるように初めて見るその画面に釘付けとなった。ダッシュボードにあたる「ポータル画面」には、メンバーが作ったアプリが並んでいる。
李は、その中の1つをクリックした。現れたのは、現在使っているエクセル形式の申請書とよく似た画面だった。
「今使っているものと同じに見えるね」「使い手が戸惑わないよう、あえて使い慣れたレイアウトに寄せています」
李の説明に、長島は納得したように頷いた。
■「紙」が消える瞬間
李は手際よく必要事項を入力。「誰が申請したかはどうやって分かるんだい?」長島は聞く。
「申請者は自動的に記録されます。…さて、ここにファイルを添付しますね」李がフォルダから「貸借対照表.pdf」を選び、画面上へドラッグした。
「…印刷しなくて済むのか」長島の口から、感嘆の溜息が漏れた。
「入力が終わりましたので、申請します」李が『申請』ボタンを押すと、どうなるのかと劉も興味津々で画面に身を乗り出してきた。
「これで申請が上長へ飛びました。私は今、上長役も兼ねていますので画面をご覧ください」
画面に一通の通知が届く。それをクリックすると、先ほど入力された内容と添付書類が即座に表示された。
「本当に…紙の回覧がいらなくなるんだな」
目の前で起きた「デジタル化」の正体に劉は実感を抱き始めていた。
■雲の正体
画面を凝視していた劉が、ふと根本的な疑問を口にする。「これ、データはこのパソコンの中に保存されているんですか?」。
クラウドの概念を少しだけかじっていた長島は、待ってましたと言わんばかりに胸を張った。「ノーノー!劉協理、kintoneはクラウドサービスだよ。データは『雲の上』に保管されるんだ」
劉は(「雲の上」ってどこだよ…)と喉元まで出かかったが、総経理の得意げな顔を見て、あえて話の腰を折るようなことは言わなかった。
「補足しますと、日本にある堅牢なデータセンターのサーバーに保管されます」李が冷静に付け加えると、劉も「なるほど、安心ですね」と納得した様子で頷いた。

オフィス業務にkintone
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宇都宮武則
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