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台湾音楽業界は現在、以前にも増して盛り上がりを見せています。北京語曲を歌う台湾人歌手は中国、シンガポール、マレーシアなどの中国語圏でも大人気を博しています。しかし、財団法人・台湾唱片出版事業基金會(RIT)によると、台湾音楽産業の生産額は、1997年の130億台湾元から、09年には15億元まで激減しました。人気歌手を続々と輩出しているにもかかわらず、10年間に90%も縮小しているのです。
波仕特線上市調網が10月29〜30日に実施した調査によると、「最近、音楽CDを買ったのはいつ?」という質問に対し、「10年前」と「5年前」がダントツで1位、2位を占め、さらに「CDを買ったことがない」が4位に入りました。音楽の人気には変わりがないのに、なぜこんなに矛盾に満ちた結果になったのでしょうか。
海賊版より強大な脅威
台湾はひと昔前、「海賊版大国」という不名誉な名で呼ばれていました。しかし02年にWTO(世界貿易機関)に加盟して以降、海賊版CDは次第にその姿を消していきました。代わりに音楽CDの脅威になったのは、ブロードバンド・インターネットの普及です。
国家通信伝播委員会(NCC)によると、台湾のブロードバンドアカウント数は、01年の120万件から、10年9月には510万件に成長。ブロードバンドの普及により、多種多彩なWebサービスが登場しました。特に有名なのは、05年に登場した「Youtube」でしょう。Webで簡単に音楽が聞けたり、コンサート映像が見られたり、特別なプログラムを使えばダウンロードも可能です。非常に便利なサービスの出現が、自然と音楽CDの需要に影響を及ぼし始めました。
台湾ならではの強敵
ほかにも、台湾ならではのWebサービスがあります。代表例は、登録制音楽サービスとして台湾最大の「KKBOX」です。加入者は音楽をオンラインで再生することも、パソコンやスマートフォンに保存してオフラインで聞くこともできます。また解説も充実、アーティストの独占インタビュー、エンターテインメント・ニュース、コミュニティー機能も提供しています。
つまり、KKBOXはもう音楽を探すための単なるソフトウエアではないということです。エンターテインメントの総合メディアであり、音楽愛好者のコミュニティーでもあります。この画期的なサービスが、「音楽CDを殺した」とも言えるでしょう。
違法ダウンロードできる環境
さらに、台湾では違法ダウンロードが比較的に簡単にできるのもCDが衰退した理由の一つと考えれます。
数年前、違法P2P(コンピューター同士がネットワークを通じてデータを送受信する方式)サイトが台湾ではやっていました。P2PソフトとしてはKuro、ezPeer、Foxyなどがその名が知られています。
当時は、Foxyを使い違法に音楽や映画などを無料でダウンロードする台湾人は1日に約40万人いたといわれます。これに対抗するため、音楽と映画産業は07年にFoxyの開発元を訴え、09年に勝訴しました。しかし勝訴したとはいえ、違法ダウンロードは完全に撲滅されたわけではありません。合法で値段が安いKKBOXと違法で無料のダウンロードソフトに挟み撃ちされ、音楽CDの市場が消えつつあります。
特別な感情を記録するアイテムに
わたしは音楽が大好きなので、学生時代から集めてきたCDはもう200枚を超えました。今でも買い続けていますが、購入頻度は以前よりかなり減りました。KKBOXはすごく便利で、わたしも使っています。ですが、ダウンロードしたファイルを聞くのと、CDで聞くのとはやはりどこか違うように感じることがあります。
学生時代、大好きなロックバンドのCDを買うために、毎日の昼食代を節約してお金を少しずつ貯めました。やっとお金が貯まって店に行って購入し、ついに実物を手にした時の喜びは、パソコンを使って一瞬でダウンロードしたことしかない人には分からないと思います。
今まで買いそろえきた1枚1枚のCDには、そのすべてに当時の感情や記憶も一緒に記録されています。音楽の大量コピー、大量ダウンロードが簡単にできる時代ですが、時代遅れのCDにも、音楽に対する感情をしっかりと保存できるという長所があると信じています。
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