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台湾で買い物や食事をして支払いを済ませると、白くて長いレシートを渡されます。受け取らないと店員さんが必死に渡そうとするので、日本人の方々にとっては不思議な光景かもしれません。
このレシートは「統一発票」と言って、財政部認定の公的領収書です。ただのレシートではなく、上に書かれている8けたの番号は宝くじの抽せん番号になっています。抽せんは、2カ月分をまとめて奇数月に行います。買い物のついでに宝くじがもらえるのはユニークな制度ですが、果たして台湾人はこれをどう受け止めているのでしょうか?
2010年6月に行われた波仕特線上市調の調査(サンプル数:1,753件)によると、買い物したときに統一発票を必ず受け取る人は95.4%に上り、後で当せんしたかどうか確認するそうです。また、Yahoo!民調中心が10月7〜8日に実施した「統一発票の抽せんに当たったことがありますか?」(サンプル数:4,692件)という調査では、67.1%の人が「たまに当たる」と回答していました。
国民への不信感が端緒
統一発票の発行は1951年に始まりました。財政部の統計によると、同年の税収は5,100万台湾元でしたが、翌年は約2倍の1億600万元になったそうです。宝くじのアイデアによって、税収の増加と国民の満足度アップを実現させた一石二鳥の制度なのです。
しかし、実は統一発票のアイデアは、政府による国民への不信感が土台になっています。
かつて事業主が売り上げを自主申告していたときは、脱税が多く行われました。そこで政府は脱税を防止するため、レシートを宝くじにし、消費者が自主的に事業主を監視する仕組みを作ったのです。
台湾ならではの慈善行為
ところで統一発票は、お金になる可能性があるので、慈善行為として寄付する人が少なくありません。
4月22〜30日に実施された波仕特線上市調の調査「慈善行為をする方法」(サンプル数:5,115件)によると、寄付の手段に統一発票を使う人は何と44.5%、「お金」に次いで多い回答項目になっています。
財団法人、創世社会福利基金会(創世基金会)によると、09年に同会に寄付された統一発票は1億枚で、当せん金額は約9,000万元、決して少なくない金額です。レシートの寄付で慈善行為ができるのは、台湾ならではですね。
宝くじも脱税に勝てず
しかしながら、慈善行為を利用して脱税するケースもあります。ある事業主は店の前に設置した慈善団体の統一発票を受け付ける寄付箱から、自分の店が発行した消費金額の高い統一発票を探し出して無効にしました。こうして売り上げを下げることで、100万元の脱税をしたのです。まさに新手の脱税アイディアで、脱税を防止するために発行した統一発票が、善意の寄付をすることで、脱税の手段の一つとなってしまったのです。
わたしは高校生のときに、創世基金会の「統一発票を寄付して植物状態の人を助けよう(順手捐發票,救救植物人)」というイベントに参加しました。とても有意義な活動だと思いましたが、そのときはまさか善意を悪用した脱税方法があるとは思いませんでした。残念なことですが、これが社会の現実なのでしょうね。
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